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谷垣派、古賀派の合流をどう思われますか?
民主党が発表した「次の内閣」の顔ぶれに対する感想は? 田中康夫さんと手を組んだことについては?
石原都知事が参院宿舎計画に反対しました。緑の森をつぶさず、現宿舎を建て直すのがいいという意見、どう思われますか?
参院選に関するたくさんの質問、疑問にまとめておこたえします!
年金問題の責任、当時システム整備に携わっていた小泉議員にあるのでは?
ふるさと納税には、賛成? 反対?
いわゆる従軍慰安婦問題でアメリカからも突き上げが来ています。どう思われますか?
森進一の「おふくろさん改ざん」問題について、先生はどうお考えですか?
山崎拓さんの北朝鮮訪問について成果が疑問視されているようですが、どのようにご覧になってますか?
教育基本法の改正が今国会で成立しそうですが、先生は賛成? 反対?
利息制限法についての先生のご意見は?
なぜ日本は中国に弱腰なのですか?
今の総裁選を見ていて、どう思いますか?
今の大学の人事システムでは、若手が育たないと思います。どのように思われますか?1
今の大学の人事システムでは、若手が育たないと思います。どのように思われますか?2
過去8年間毎年3万人を超える自殺者があるとの発表!政治的にも忌々しき問題であると存じますが、存念を御伺い致したい!
「議員活動報告」にNPO議連活動再開、とありましたが、具体的にはどのようなことを目標にされているのですか?
次期総裁選に向けて、靖国問題がクローズアップされてきています。加藤先生のお考えをお聞かせください。
共謀罪について、先生の考えをお聞かせください。

谷垣派、古賀派の合流をどう思われますか?
おこたえ
以前から、「大宏池会」としてまとまりたいという意見は、党の中にありました。しかし麻生さんが首相候補として立ち、谷垣さんも立つという状況ではムリだろうと思っていました。政策的に、麻生さんと古賀派には相容れない部分がありますし、谷垣さんにもそのような部分はありますから。
しかし、古賀派には、ハトタカ共存という特徴があって、「中宏池会」なら可能だろうと思います。それでも政策的に意見をまとめられなければ限界が来るでしょう。政策中心の原則を維持することが大切ですし、いい政策ができあがっていくことを期待しています。
ご質問民主党が発表した「次の内閣」の顔ぶれに対する感想は? 田中康夫さんと手を組んだことについては?
おこたえ
よその党の人事には口を挟みません。以上です(笑)。
田中さんと小沢さんというのは、感覚の違う人ですよね。おふたりがケンカしないことを祈ります。
ご質問歴史的とも言える惨敗という形になりましたが……
ご質問石原都知事が参院宿舎計画に反対しました。緑の森をつぶさず、現宿舎を建て直すのがいいという意見、どう思われますか?
おこたえ
清水谷の近辺に残された緑は、私もその近くの麹町中学、日比谷高校に通っていた時代から目にする機会が多く、よくもこれほどの緑が都心のど真ん中に残っているなと思っていました。あのような環境は、保存しておくほうがいいと思います。
宿舎も確かに重要ですが、人間が住むマンションというのは、どこかに探し出すことができるのではないでしょうか。都知事を支持します。
ご質問歴史的とも言える惨敗という形になりましたが……
おこたえ
無党派層だけではなくて、出口調査によると自民党支持層の25%が民主党に入れているのです。これは相当なことです。特に1人区29のうち23で負けています。これは地方からの反乱、地方の自民党員からの反乱と言ってもいいと思います。
原因は小泉改革の影の部分、それを安倍さんがかぶった形なのだけれども、当の安倍さんがそこに気づいていないと地方の有権者は見たのですね。
仮に安倍さんが青い顔をして「先輩の残したものは大変なのですよ」という感じで努力していたなら、「じゃあ地方のこともわかっているね。ホリエモンと違ってあまりすばしっこくない人も世の中にいるんだよ、安倍さんならわかってくれるよね」ということになって期待度が上がっていったのだけれども、そこが逆だったのですね。「強行採決」とか「私の国づくり」ということばかり声高に言うものだから、「それなら、小泉郵政選挙で与えた議席を今の衆議院で取り返すことは出来ないけれども、それを参議院で表現しよう」ということだったのだと思います。
ですから、安倍さんにとっては不幸なことですが、やはり市場原理主義、利潤追求がすべての社会と政策の基準というところの大転換が求められているのだと思います。
ご質問そういう状況にも関わらず、安倍総理は続投すると言いました。これを聞いたときにどう思いましたか?
おこたえ
「えっ!?」と思いました。投票結果もまだわかっていない、非常に早い段階での発言でしたしね。また、結果が出そろい、世論が彼のもとに届いてからもそれに十分配慮しないのであれば、安倍さん自身だけでなく、特に次の衆議院に向けて自民党も傷つくのではないかと心配しています。
ご質問今からでもそれなりの責任の行動をとったほうがいいとお考えですか。
おこたえ
それはもう安倍総理に限らず、政治家の身の処し方は、政治哲学とか人生態度の問題です。民意に耳を傾け、自身の哲学に照らすことが大切です。民意を聞かない形で進んでいくと、本人も自民党も国民から見放されてしまうのではないでしょうか。
それから、これだけ大きな審判を国民に求めてその結果が歴史的敗北なのに、そのまま日本の政治が変わらないということであれば、国際的にも政治的評価は下がるのでないのでしょうか。
ご質問これから自民党はどういうふうに道筋を立てていけばいいのでしょうか。
おこたえ
一番大事なのは、なぜこれだけの敗北になったか、なぜ自民党支持者の4分の1が離れたかということの分析です。自民党の中で、議員たちがその点を自由に議論できなければなりません。もちろん、執行部とか総理周辺とか閣僚は立場がありますから、「団結してあまり揉めないように」と言いますけど、その活力のない自民党、議論のない自民党ではまた大きな打撃を与えられる恐れがあります。
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ご質問年金問題の責任、当時システム整備に携わっていた小泉議員にあるのでは?
今、国民の生活を根底からゆるがす『年金問題』について、基礎年金番号導入が制定された当時の厚生大臣に責任があると、自民党の片山議員が国会の場でおっしゃっていました。私は、紙ベースのデータをデジタル化する作業など、実際のシステム整備にかかわっている厚生大臣、つまり、菅直人議員のあとに厚生大臣に就任した小泉議員のほうが責めを負うべきだと思います。加藤議員は小泉議員と親密な間柄だとテレビのニュースなどではいわれていますが、率直にどう思いますか?
おこたえ
年金問題が相変わらず続いています。今、私のなかでは徐々に、責任の所在が集約されてきつつありますので、お話ししましょう。
責任問題の第一は、まずもって“申請主義”を取ってきたことです。「自分の年金に疑問があれば言ってください。そうしたら調べてあげますよ」ということですね。こうした事務処理体制の根本は、年金制度が始まって以来のことで、与党全体の責任だと思います。菅だ小泉だということではなく、この体制に問題があったことを与党議員全員が見逃してきた。単なる事務問題だと思ってきたのであって、個別の大臣の問題ではありません。ましてや菅さんに焦点を当てるのは、長く政権与党の座にある自民党の風格に欠ける行為。これは言ってはいけません。
第二に、社保庁の職員は、ごく最近まで厚生大臣のコントロールが利かない労働組合であり、その仕事は手抜きでした。そこは厳しく責任を問われなければいけません。
第三に、国民1人に1つの社会保障番号ないし、いわゆる国民背番号が付いていれば、現在の困難はほとんどなかったはずです。しかしそれは「プライバシーの問題」「役人にコントロールされるのはイヤ」などの理由で、各政党、国民、メディア総出で反対してきました。与党にも、「どうしても番号制度を!」という勇気がなかった。そういう意味では、ここ十年来の政府には“及び腰”の責任が問われるでしょう。
さて、労働組合の責任追及の結果、組合側は復讐に出ました。内部の事務処理上の問題点を、メディアや民主党にリークしている可能性は極めて大きいと思われます。選挙前に当然考えられた攻撃で、今後も小型・中型のリークが続くでしょう。与党にとっては、厳しい選挙になることへの覚悟が問われます。
選挙を一週間伸ばしても、年金問題は静まりそうもありません。頭が痛いところです。
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ご質問ふるさと納税には、賛成? 反対?
おこたえ
賛成です。反対する人の理屈は、5トントラックに山盛りになるほど届きます。そのひとつが、都市部に入ってくる税収が、議会の承認なしに機械的に都市部以外のところに配布されるというのは「議会民主制の観点からおかしい」という議論です。しかし、たとえば市川市は、市民が希望すればその人の納税額の1%を応援したいNPO団体にいくようにできるという制度があります。この仕組みを「1%条項」とか「ハンガリー条項」といいます。これの導入のときにも大議論になりましたが、今はうまく運用されているようです。このような制度を入れるということを議会が承認しさえすれば、別に議会軽視にはならないでしょう。
地方で収入がなかなか得られない昨今でも、人々はいっしょうけんめい貯蓄をします。それをドンと使うときが、一生のうちで2回あります。1回目は家の新改築。2回目は、子どもが東京や大阪といった大都市の大学に行くときです。4年生大学に入れると、1500万~1700万かかると言われます。地方の平均的な収入の夫婦だったら、それで人生終わりくらい疲れます。ましてや子ども2人を送り出したら、夫婦は産卵後のシャケのホッシャレ*みたいになってしまう(笑)。
地方で育った優秀な子が東京の大学を卒業して、ソニーや東芝といった一流企業に就職し、その税金が財務省や石原知事のところに入っていくというのは、どう考えても納得できない(笑)。もちろん、そこを地方交付税が調整しているのだとしても、10%くらいはふるさと納税してもいいじゃない、というのが田舎代議士の率直な感想です。
編集部注: *シャケのホッシャレ
庄内では昔から、精根尽き果てるほどに辛い状態や状況を、産卵が終わった鮭がやせ細って命尽きていく様子にたとえて、このように表現します。

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ご質問いわゆる従軍慰安婦問題でアメリカからも突き上げが来ています。どう思われますか?
おこたえ
「細心の注意が必要です。アメリカの上下両院の決議というのは、1年に2000本くらい出るものですから、通常は、あまり政治的に大きな存在ではありません。しかし、それに対し日本の総理大臣が反応して、NYタイムスの社説に取り上げるまでに拡大していってしまったのですから、安倍さんは間違った対応をしたのです。
総理大臣として発言するからには、コメントの出し方には気を付けるべきです。いわゆる従軍慰安婦がいたということは事実なわけです。それを軍が集めたか、業者が集めたかという点を区別するべきだとか、狭義の強制性はなかったという説明の仕方を持ち出したことがまずかったのだと思います。コロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏が先日、我々の「アジアビジョン研究会」に来て言っていました。「非常にリーガリスティック(編集部注:細かい字句解釈をすること)だ、些細なことにこだわりすぎている」と。
アメリカの社会やメディアに通じさせるには、よほどの準備をさせないといけない手法で対応してしまったということでしょう。
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ご質問森進一の「おふくろさん改ざん」問題について、先生はどうお考えですか?
おこたえ
「おふくろさん」、名曲ですね。あの曲が大好きでカラオケで歌う人も多いことでしょう。私は、歌というのはメッセージを伝えるものであると思います。ある作曲家が言っていたことですが「歌詞が先にできて、そのあとに曲を漬けた場合はヒットする。先にメロディがって、あとで詞を書き込んでいったものはヒットしない」んだそうです。
私もカラオケで歌うのは好きですが、それは歌詞を歌うんであって、メロディはそれを補う程度についていればいい。歌詞をどう解釈し、あたかも朗読するかのごとく歌うというのが本来の歌で、その意味からいえば、川内康範さんは作詞家で、その彼があるメッセージを歌詞に託しており、「それを勝手に変えないでくれ。森が歌ったからヒットしたなんて僭越なことをいうな」と思うのもわかります。しかし、同時に歌い手の森進一さんがその詞を読んで、自分なりの詞の解釈をするということも許されてもいい気もする。
これは極めて重要な論争です。多くの人が参加して論争してもいい、小さな問題ではありません。
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ご質問盟友の山崎拓さんが、北朝鮮を訪問しましたね。成果が疑問視されているようですが、加藤先生はどのようにご覧になってますか?
おこたえ
山崎さんが訪朝するにあたり、実は私にも相談はありました。去年のクリスマス後のことです。私は、「かなり批判を受けるだろうけれど、日本だけが北朝鮮とパイプがない現在、その批判覚悟でパイプになることは意義があることだ。半年後にきっとみんな分かってくれるだろう」と言いました。
パイプづくりという点では、まずまずうまくいったと思います。「成果がないじゃないか」と言われますが、政府を代表しているものではないから、向こう側とは交渉はできない。ですから、当面の成果はなくて当然です。それが私の考えです。
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ご質問教育基本法の改正が今国会で成立しそうですが、先生は賛成? 反対?
おこたえ
正直言いますと、教育基本法の改正については、あまり興味がありません。というのは、直したところで何も変わらない、それで明日から戦争になるというものではないからです。
ただ、教育基本法の議論がなぜここで急に出てきたかという背景については、考えてみたほうがいいでしょう。
自民党内では昔から、世の中に理解できないような出来事が起きると、かならず「教育が悪い」「日教組の戦後教育が日本の心を教えなかった」という声が出てきます。ここ5年くらいの流れで見ますと、最初に出てきたのは日本人の心を『教育勅語』でもう一度教え直そうという議論でした。それが1年半ほどでストンと落ち着いて、誰も言わなくなりました。それも当然といえば当然です。教育勅語をよく読んでみると分かると思いますが、親孝行や夫婦の和合、遵法、義勇心などについて述べられている、600語ほどの短文です。戦争中なら、皇国史観による天皇中心の国のあり方に説得力がありましたが、今は時代が変わっているのですから。
その後、日教組がけしからんという議論に移りましたが、日教組も今や組織率20%代に落ちており、特定の地域を除いて、あまりかつてのようにイデオロギー的でもなければ、政治的な活動もできなくなっています。
そんな状況で「日本人の心」を教えるといっても、果たしてそれを教えられる先生がどれほどいるのでしょうか? 「第1級大和魂士」「第1級愛国士」なんて資格試験をするつもりか、と新右翼のリーダー鈴木邦男氏の著書にありましたが、確かにその議論に具体的に入ると大変です。そこで、とにかく教育基本法の改正で突破口を開こうとしている──私は、大まかにそんなふうに流れを読んでいます。
流れはともかくとして、最初に言ったように、教育法の改正といっても一種の基本法ですから、具体的に大きな変化などは起こらないでしょう。私は教育基本法の改正に過大な期待を抱くべきではないと思うし、ましてや滅茶苦茶な改悪になるものでもないと思っています。
それよりも、安部内閣のしようとしている学校評価制度、教育バウチャー制度など、現に存在するもっと具体的な問題に目を据え、しっかりと議論しながら、その背後にある問題点にまでその議論を深めていくことのほうが大切です。特に教育バウチャーの施行によって、学校と地域の絆、町内会といったコミュニティがズタズタに壊されてはしまわないか、そこを議論しなければならないと思っています。

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ご質問利息制限法についての先生のご意見は?
現在金融庁が進めている「利息制限法」の現行金利を変更することについては、自民党内でも議論が伯仲していたように見受けられました。加藤議員には、政府自民党の主流とは違う主張にたびたびお目にかかっている気がします。利息制限法の取り扱いについても、ご意見伺いたく存じます。
おこたえ
今年の6月頃から、自民党内で行われた消費者金融に関する討議の会合に何回か出席しました。一方は「あまりサラ金をいじめると貸し渋りが起きて、闇金融に走ってさらに悲劇が増大する」、もう一方には「サラ金そのものが多重債務者を作っていくプロセスである。利息制限法の範囲内まで下げるべきだ」という意見の対立があり、毎回会議をやればかならず2時間はかかる激しい対決でした。
私は、現行金利の利息制限法の範囲内(20%)に収めるという意見に賛成で、その趣旨で議論に参加しました。サラ金業者の議論も分かりますが、現在日本のすべての金融機関から貸し出されている金利は、当然のことながら20%くらいまでのものが非常に多くて、22~23%の金利に抑えて貸しているケースは少なく、そこからいっきょに出資法の定める29.2%というグレーゾーンの天井に貼り付いた金利での貸し出しが多くなるという構図になっています。これは、明らかに「取れるなら取れるだけ取っちまえ」という貸し方が行われている実体があることの証左でしょう。 現行では「10万円までは20%、そこから借金の額がだんだん高くなるにつれて利率を低くしていき、上限の100万円は10%にする」となっている金利区分を、今度の改正案では変えるとしています。そうすると、50万円未満と100万円以上500万円未満の区分では利上げになり、規制強化に逆行する現象が起きます。サラ金からお金を借りる人は、スタートの時点で30万円くらい借りてしまうことが多いことを考えると、多重債務者を作るきっかけを増やす可能性さえあります。また廃止後2年間にわたり、少額・短期の貸し出しに対して、個人に年25.5%、事業者向けには年28%の高金利を認める特例を措置している点も問題です。火種はまだ残っています。そう易々と改正案提出とはいかないでしょう。
とにかく私は、多重債務者を作らないようにという立場から議論していきたいと思っています。

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ご質問なぜ日本は中国に弱腰なのですか?
私は日本の首相がただただ、中国に頭を下げるしかできないことを悔しく思っています。
これまでも日本は、中国に対して援助活動、円借款や技術供与をしてきました。中国にいる大使館員の方も、日本の援助でいろいろな施設を建てても、感謝の言葉がないこと、日本の誠意を無視されることを非常に悔しく思われているようです。
「申し訳ないことをした、でも、戦後中国のためにこれだけのことをしてきたのだ」と、なぜ一言も言えないのですか?
おこたえ
日本と中国は隣国同志、3千年以上の付き合いがあります。その長い歴史のなかで、遣唐使、遣隋使の頃には日本人は中国の文化を尊敬して学びに行きました。近世になると、中国に対して日本が少々優越感を持ったり、軽蔑したりする風潮が広まった時代もありましたし、少し前までは、中国は共産主義の国だから心が通じないと思ったり。最近はどうやら我々にとって普通の感覚と思える中国になってきたみたいだから、文句のひとつもつけたくなってきた・・・とさまざまな変遷を経てきたのです。
そういう日中の歴史の中で、一番大きな出来事はなんといっても第二次世界大戦です。やはり日本が頼まれもしないのに中国大陸に派兵して、数百万以上の中国人が亡くなったという結果になったのですから、そのことについては日本が悪かったと積極的に認めるべきだと思います。
特に、日露戦争の後の日本の中国に対する政策、とりわけ1915年の「対華21ケ条要求」以降の対中政策は、「自存自衛のための戦争」というふうに正当化はできないでしょう。
その戦争が終結し、日本は賠償金を払わないまま中国との国交を回復しました。その代償として、さまざまな経済援助が行われたことは事実です。それは同時に、中国の経済を日本の自由主義経済と同じかたちにして、日本に敵対的でない体制にしたいという大きな政治判断から行われたものでした。その内容のほとんどは、実は無償の援助ではなく「対中借款」という言葉でも分かるように、貸しているお金です。今は、その返済金額のほうが新規に貸すお金より多くなっています。
しかし、中国側にもプライドがあります。ロシアからの援助で建てた建物や橋については、建築様式が明らかにロシア的ということもあって、ロシアの援助ということが明確になっているようですが、ご指摘のとおり日本からのものは、ともすれば大きく宣伝されていないということは確かです。そこは最近、日本の大使館も「明示してほしい」と強く言っています。同時に最近中国は、日本の大きな日本経済との協力がなければ、自国の経済発展はあり得ないということを心底理解しているので、それも今度の安倍総理を迎え入れた理由だと思っています。
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ご質問今の総裁選を見ていて、どう思いますか?
おこたえ面白くないですね(笑)。政策論争はそれなりにありますし、幾つかの点では各候補の意見の違いが見えてきました。アジア外交に関する、安倍・麻生vs谷垣とか、消費税に関する安倍・麻生vs谷垣などは、その例です。
一方、新聞では、安倍さんが圧倒的と書いています。党内の雰囲気もその通りです。政治家の論争は、拮抗した勝負のときにはいい論争になりますし、メディアも意見の違いや状況をこと細かに書きたてますが、力の差が歴然としていると、本気で取り上げようとしません。政治家の主張は、後ろにサポートする組織や、それなりの後ろ盾があってこそ光るもの。手に汗握る選挙でないと、盛り上がらないのです。
そのためか、安倍さんは「金持ちケンカせず」という感じで、とんがった鋭い主張、問題になりそうな主張を削ってきました。彼の著書『美しい国へ』の中で、日中関係は政経分離でいくという大胆な提言がありましたが、それも陰をひそめています。
それでも今後の論争に期待するとすれば、教育問題でしょう。教育基本法というと、「愛国心」と言うのか、「郷土を愛する心」なのか、「国を愛する」とするのかという表現の問題に焦点が当たりがちですが、安倍さんや麻生さんが提唱している学校監査の制度、いわゆる「教育バウチャー制度」(国または都道府県が、小中学生に義務教育を受けるクーポン券を配布して、その子が居住する市町村内のどこの学校も選べるようにする制度)をこそ、論争してほしいと思います。このことが具体的に話し合われると非常に面白いのですが、もう勝負が決まったも同然という雰囲気ですから、なかなか論点として浮かび上がってきません。私などは、大変な大問題だと思っているのですが。
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ご質問
今の大学の人事システムでは、若手が育たないと思います。 ~ 若手大学教員の悩み(1)
埼玉 30歳 Kさん

はじめまして。
私はバイオ研究に携わっている、一国立大学の助手です。私は出身教室とは異なる研究室に公募にて移動しました。この職につきまして3年ほどになりますが、いろいろ「これがふつうなのかな?」と悩みながら日々過ごしています。

その一つは、教授との関係です。
と言うのは、「君に任せておけば、研究室は大丈夫だよな」と言われ、学生の指導やご自身のプロジェクトについてほとんど任されています。当初は、「私に対する絶大な信頼からだろう」と思っていましたが、日を重ねるにつれ「私に任せておけば、自分は指導しなくてもこの地位を守れるな」と思っておられるのではないかと思わずにいられなくなりました。

教授は、学部運営や講義等でお忙しいことはよくわかります。しかし、研究のアイデアも出していただけないばかりか、研究費についても「プレゼンが苦手だから」と言われほとんどされません。加えて科研費なども「出しても通らないから」と、最初からあきらめています。加えて、私が論文を書いても、教授ということで立てなければならず、教授をラストオーサーにし、私はその前にしています。

このような研究室に所属していますと、「自分の努力は、教授に吸血鬼のごとく吸い取られている」と思わざるを得ません。また他の研究室に移りたくても、まだまだ業績がないということもあり、出られようもありません。

先日このような悩みを知り合いの教授に相談したところ、「私も若いときは耐えたんだ。だから君もがんばれ」と言われました。しかし、どうも納得いかないのです。なぜなら、その教授の若かった高度経済成長期と違って、私たちのおかれている今は「一寸先は闇」で、今の努力が将来に本当に生かせるか、自信が持てないからです。

このように悩んでいらっしゃるのは私だけでないと思うのですが。
みなさんどうでしょうか?

ご質問
今の大学の人事システムでは、若手が育たないと思います。 ~ 若手大学教員の悩み(2)
埼玉 30歳 Kさん
二度目の投稿になります。
先日、教授との関係についてメールさせていただきました。
今日は大学の人事システムについて素朴な疑問があります。
加藤先生、みなさん、教授は一度教授になったら絶対的なものと思われますでしょうか? 企業など一般社会では、責任を明確にし、人事はもっと流動的なものと思うのですが?

現在の大学における人事システムでは、一度教授になれば降格することはなく、A大学からB大学に移る場合も、教授のままです。しかし研究の世界は、日進月歩であり、たとえ業績があるからと言えども、最新の研究を進めていなければ、教授たる立場とは思えません。しかも、いつまでも高齢の教授がいらっしゃると、その被害は若手研究者ばかりか、その元で指導を受けなければならない学生にも及びます。

もしこの国が、真の「科学技術立国」を目指すのであれば、論文の総数だけで評価するシステムを改め、日々の活動状況を反映した人事システムを導入していただけないものかと思います。

新年度より学校教育法が改正され、教授、准教授、助教、助手へと変更されるとのこと。
これまで、助教授、助手が、教授を補佐する立場であったのに対し、新制度は、それぞれが独立した立場で研究できるようにお考え戴いたと聞いています。

ところで、新学校教育法では「教授は、専攻分野について、教育上又は実務上の特に優れた知識、能力及び実績を有する者」とありますが、「特に優れた」とは何なのでしょうか? 論文総数であったとしたら、どんなに最新の優れた成果を出している若手研究者は教授になれません。また論文総数であれば、お年をとられた方のほうが評価されるものになってしまいます。もし、その論文作成が、本人の努力でなく、立場を利用した、若手研究者の汗と涙の結晶だったら。

私は、世の中のために、また日本の科学技術のためには、情熱を持った若い世代がもっともっと活躍できる研究環境整備が必要だと思います。加藤先生は、大学院生に対して「親のすねをかじらず、自由に研究勉学に励まれるように」と学振制度を作られた方だと伺っています。それにより、多くの若手研究者が育つことが出来ました。しかし、若手研究者が本当に活躍できる場がないことは非常に深刻です。一生懸命勉強しても就職先がない、これではサイエンスの世界に夢を持たせることが出来ませんし、当然入ってくる優秀な人材も減ることになりかねません。若く独創性、またチャレンジ精神旺盛な若手研究者が活躍する大学、研究環境整備をお願いしたいと思います。

そこで提案です。
例えば、教授、准教授、助教等の肩書きについてですが、現行の各大学における教授会の判断に依存したものではなく(教授会における絶対的な人事システムの存在が、いまだ大学に「白い巨塔」を生み出しているのではないでしょうか。おそらく大学運営にもいろいろ弊害となっているかもしれません)、3年間ほどの研究実績に基づいて国家補償するものにしてはどうでしょう。当然降格も昇格も変動し得るものです。なお給与システムは勤続年数的なものを基本とし、そこに肩書きを反映した業績給を上乗せします。さらに科研費制度は、あまりに高額な研究費が一極集中している現在の制度を改め、まず大学また研究機関に所属する研究者に平等に基本研究費として保障していただきたいです(教授だから数千万円とか助手だから5万円では、機会の平等になりませんから。余った研究費をどうしようかと悩んでソファーを買ったなどのうわさを聞いたこともあります)。おそらく、一人当たり100万円ほどでどうでしょうか。その基盤上に、提案型研究費の制度を確保してはどうでしょうか。

これを読まれた加藤先生、みなさま、どのように思われますか?
ご意見をお聞きしたいです。

おこたえ
私はずっと、日本の教育者の資格制度について考えてきました。ひとつは小中学校の教員の資格、もうひとつは、Kさんが身をおかれているような大学の教授職についてです。

日本では、一度資格を取って就職してしまうと、医師も弁護士も税理士も、いっさいテストがありません。更新制度といって思いつくのは、運転免許やいくつかの職業技能資格と政治家くらいで、我々は3年に1度の更新制で、全体の4分の1は“免許”を取り上げられるという厳しさです。

お医者さんの場合は、まだ患者が選べる可能性があります。しかし教師は、大学で教員の免許を取り、22、23歳で小学校、中学校に就職してから60歳の定年まで、一切のテストもなく身分が保障されています。余程ひどいことをすると「分限制度」により懲罰を受け免許を剥奪されることもありますが、実際に適用されるのは極めて珍しいケースです。公立の小中の場合、親や生徒が先生を選べません。その一方で、先生の身分は完全に保証されています。

これでは、あまりにも守られすぎているのではないかと、学校教員の免許更新制について審議を続けてきた中央教育審議会(中教審)は、10年ごとの講習を義務づける更新制度を、現職にも適用することで合意しました。 実は昨年の時点で「新採用の教員にのみ適用」という話だったので、我々も「それはおかしい」と反論をして、やっと現職にも適用となったという経緯があります。

というわけで、教員免許については、やっと風穴があき始めたところですが、私は、将来的には大学の先生にもこの制度が適用されるべきだと思っています。
参考までに、アメリカでは「tenure(テニュアー)」という、大学教授の終身在職権取得のための制度があります。ある大学に教授として採用されても、最初の7、8年は準教授のようなもので、この間は1~3年ごとに契約を更新します。更新の際には、教育指導、研究などの業績が審査され、不的確と判断されればクビです。テニュアー付きの教授になれるのは、32~33歳で早いほう。テニュアーになれたら同僚や教え子たちが、お祝いのパーティーをやるくらい、嬉しいことなんですね。
日本の教授は、最初からテニュアー付きです。それではあまりに刺激がなくていけないというので、一定の期間で任期が限られていく「任期制」が導入されることになったのですが、今すでに教授となっている人には適用されません。すべての教授に適用されるようになるには30年かかるでしょう。つまり、Kさんのような立場の人たちは、この制度では救われないのです。
やはり、現職の教授にもチェック機関を置かなければと思います。そうすれば、自分で論文を書くようにもなるでしょう。しかしどうにか助教授、助手といった人たちが“教授の付属物”にならないように制度を変えたとしても、どのように運用されるかが問題です。たとえば助手や助教授が、教授に対して「私はあなたの付属物にはなりません。私の書いた論文は私のもので、自分の名前で出します」と言って、はたして大学というコミュニティにい続けられるのか??。制度を作るからには、運用まで見届けないといけないと思っています。

また、Kさんは「実績を論文総数で判断しないで」とも言っていますが、「Citation=サイテーション」、つまり引用をどれだけされるかも重要な尺度でしょう。論文をたくさん書いただけでなく、それがいろんな人に引用され、論議の対象となる、参考にされる論文であるということが、本当の学問的な成果だと思います。
ただ、そうなると、ともすれば論文になるような分野が重要視されやすいという問題も出てきます。最近、薬学やバイオの分野でいえば、いろんな新薬が発見されますが、それを現実に薬にしていいかを調べる“治験”が、日本では承認が遅いため、みんな外国に治験を頼んでいる状況です。あまり論文や引用回数ばかりを評価基準にして、地味な研究や、より臨床、病院、医療の現場に近いような研究というのが日の目を見なくなっては困ります。基礎研究と川下の応用研究、産業に結びつけられる研究とのバランスをとるのは、非常に難しい。日本では、臨床医学という、より川下の、人間に、医療の現場に近い研究が重要視されずに、極めて学問的な高尚な研究だけが重視されているという批判もあるわけで、その辺Kさんはどう思われるでしょうか。

いろいろ書きましたが、所詮、私は大学人ではないので、現場をよく知りません。ですから、ぜひみなさんも、このKさんのように現状を知らせてくださると有り難いです。

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ご質問先日の警察庁の発表によれば、過去8年間毎年3万人を超える自殺者があるとの発表!
これは、政治的にも忌々しき問題であると存じますが…、加藤氏の存念を御伺い致したい!
おこたえここ数年、考え続けているのですが、政治家にとって自殺が多くなることが、最も痛烈な打撃です。「あなた方の政治では、生きる希望がない」と宣言されているようなものですから??。
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ご質問「議員活動報告」にNPO議連活動再開、とありましたが、具体的にはどのようなことを目標にされているのですか?
おこたえ超党派のNPO議連は、15年前にスタートしました。活動の推進力となったのは、当時会長だった私、事務局長の辻元清美氏、自民党の熊代昭彦氏でした。不思議なことに、加藤、辻元と相次いで議員辞職し、熊代さんも国会を離れてしまったので、NPO議連はしばらく開店休業状態だったのです。
 ここで再び、この議連活動を活性化したいと思っています。2~3ヶ月前から、各党の幹事が寄り合い、近々総会を行うべく準備中です。
 具体的な目標とのご質問ですが、一番のテーマは、法案の名を変えることでしょう。10年前のNPO法案提出の際にも「市民活動法案」としたかったのですが、当時の自民党(特に参議院)では、「市民活動など、野党革新陣営の言葉だ」とする意識が強く、結局「特定非営利活動促進法」などという、舌をかむような名前になりました。通称も「NPO」です。もっと多くの人が分かりやすい言葉に変える必要があると思っていました。自民党でもここ数年は、正式文書に「市民活動」の言葉を抵抗なく使うようになってきたので、期は熟してきたと思います。
 二番目に、17項目に分類されたNPO活動の種類(法第2条 別表)の見直しを行うこと。
 三番目に、手続きの簡素化が進んでいるかどうかをウォッチします。NPOを設立する手続きは比較的簡単なので、現状ではわが国のNPOは玉石混交といわざるを得ません。しかし、税制上の優遇を受けることのできる「認定NPO」になるには、あまりにも煩雑な手続きを行わなければならず、実効性の薄い認証制度となっていました。そのため、今年度の税制改正で「簡易認定制度」を導入し、年間の事業活動予算額が800万円以下で、1年に3000円以上の支援金を納める人が50人以上いる団体であれば「認定NPO」としましょうということになりました。これがうまく機能するかどうかも、この議連活動のなかの重要な目的になるでしょう。
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ご質問次期総裁選に向けて、靖国問題がクローズアップされてきています。加藤先生のお考えをお聞かせください。
おこたえかねて心配していたとおり、この問題は日本外交のますます大きなイシューになりつつあり、秋の総裁選では一大テーマにならざるを得ないでしょう。ここでしっかり議論するべきだと思います。
 問題の本質は、国のために殉死してくれた若者に慰霊の気持ちを表するという“心の問題”だけではありません。その若者たちに出撃を命じた責任者、そのときの国の方針、そこにまで至った日本の歴史的状況までを踏まえた議論が必要です。
 自国民350万人、近隣諸国の1000万人を死に至らしめた戦争を、日本は総括していません。ドイツ、イタリアはやっています。日本は天皇の責任問題へと波及することを避け、その代わりに戦勝国アメリカが中心となって行った東京裁判を受け入れたのです。自国の歩み、あの一大事件を振り返る力がないということは、日本の政治、外交のさまざまなシーンで弱点を露出することになります。読売や朝日新聞では、社をあげての総括調査を行っていますが、ぜひ続けてもらいたいことです。
 私はこのHPで、靖国問題は対中・韓問題にはとどまらず、日米問題にも発展するだろうと何度も警告してきました。最近のアメリカの学者やメディアの主張、そして米下院のハイド外交委員長の書簡などをみますと、どうやら私の見通しは正しかったようです。
「東京裁判など冗談じゃない」と中国に非難の矛先を向ければ向けるほど、中国の後ろにぼんやりと見えていた背後霊(アメリカ)が正体を表し始める・・・これは論理的に考えてみれば当然の、国際政治のいろはのい。現状の混乱は、それが無視されてきたことの表れではないでしょうか。
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ご質問共謀罪について、先生の考えをお聞かせください。
おこたえ共謀罪については、非常にやっかいな話になったなと思っています。
今から6年前、「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」という国際条約が成立し、3年前に日本はこれに署名しています。その際に、自民、民主、共産、公明の各党は、揃ってこれに賛成しました。ところがこの条約は、単に約束するだけではいけなくて、批准するには、テロだとか麻薬といった国際的な犯罪行為を防止するために、国内の法律でちゃんと麻薬取引やテロ活動を始めそうな人を罰するような国内法を作りましょう、という義務が付与されていたのです。
そして今、それを実行しようというときになって、このような混乱に陥ってしまいました。民主党も、もともとは条約批准には賛成しているので、共謀罪そのものを否定してはいません。民主党は、さまざまな罪のなかで300程度の犯罪については国内法を作るのは良しとしているわけです。一方の自民党、公明党は、600程度の罪については共謀罪を適用させようと言っています。つまり、ある意味では技術的な差でしかありません。そこがどうも、いろいろな不信感があってうまくいっていないのですが、私は本来、与野党の議員からこのような条約の内容に詳しい専門家が集まって話し合い、合意にもって行かなきゃいけない話だろうと思っています。
私は、基本的に共謀罪を成立させ、条約を批准するべきだと思っています。