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ミャンマーと中国の災害に思う
平成20年5月19日
このメッセージはテキストのみとなります。

 ミャンマーを襲ったサイクロン「ナルギス」による死者の数には呆然となります。巨大な津波が人の住む陸地に押し寄せ、一挙に10万人近くを海に連れ去ってしまった……そんなイメージが浮かびます。
 この未曾有の災害に際して、軍事政権が諸外国の援助受け入れに抵抗を示しているのには、私もいらだちました。彼らは外国というものを、鬼、evil、不吉なもの、と思い込んでいるフシがあります。戦後の非常に長い間、一種の鎖国を行ってきたビルマ。そして現政権に代わっても、それを維持し続けるミャンマー。いくら国民が命を落としても、「この機会に乗じて外国人が最新鋭の救援ヘリで飛んできたり、アメリカ兵の救援に国民が感動したりするところをつくってはいけない、ここが我慢のしどころだ」とでも思っているのでしょうか。
 ミャンマー問題の根底には、単に「人権問題」とか、「民主主義確立の観点」といった現代的で合理的な討論ではなかなか乗り越えられない、政権中枢のある種の思い込みや外国嫌いがあるように思います。そういうなかで、わが国に対してだけは、ビルマからの独立を応援してくれた国として、ミャンマー国民こぞって非常に友好的です。ですから、あの国に2〜3時間いるだけで、すぐにこの国の人たちは親日的だということが分かります。そして、ミャンマーが好きで好きで仕方ない人になってしまいます。
 それに対して、ロシアに赴任した外交官や商社マンはほとんどが、なぜか分かりませんが、嫌いになって帰ってきます。共産党政権が終わった現在でも、案外その傾向は残っているのではないでしょうか。だからではありませんが、ミャンマーに手を差し伸べたい。本当にそう思っています。
 一方中国は、自国で大きな地震が起こることを前提にしていません。ですから、民家は煉瓦づくりです。また、竹の骨組みで泥を固めて家屋を造る南西部の奥地の農民や少数民族も山ほどあって、今回そこで地震が発生しました。当日、発表された犠牲者数は推定1万人弱でした。しかし、私の知る中国問題の専門家は、一瞬にして「これは10万までいくぞ」と判断していました。
 あの地域に行ったことのある人なら、その建物の構造と、マグニチュード8.0という情報から、直感的に被害の大きさが恐ろしいものだと分かるはずです。そして実際に、被害者の数は増え続け、専門家の予測した数字に近づきつつあります。
 しかも、最近の経済発展で、かの地でも7階建てのコンクリートの建物が建っています。私がいちばん心配しているのは、おそらく耐震偽装どころではない手抜きが行われている建築物ではないかと想像します。仮に建築基準を定める監督官庁があったとしても、その検査を本格的に厳しくやっているかといったら疑問です。行政機能や、細やかな規則が厳重に作り上げられている日本でさえも、例の事件(編集部注:2005年の耐震偽装事件)が起きたわけですから、中国ではさらなることが起きていてもおかしくありません。
 おととし3月、人民代表大会(中国の国会)に温家宝首相が、行政報告演説をしたのですが、そのなかで「過去1年間、中国全土において汚職で逮捕された公務員が4万4000人」と言っていました。人口比率で言えば、日本では4400人ということになります。すさまじい数の汚職、賄賂が横行している。このような状況と、胡 錦濤、温家宝両氏も必死に闘っているのでしょう。
 そのような土壌があって、今度の地震が起きたのです。7階建てがグシャリと崩れ落ちている映像を見るにつけ、震度のせいか手抜きのせいか、天災か人災かと、頭の中で判断が揺れ動きます。
 さて、日本の国際緊急援助隊員31人が16日、中国四川省の青川(せいせん)県に入り、救出活動を開始しました。この地震で中国が受け入れた最初の外国部隊となります。日本の持つ地震に対する経験と感覚、緊急の生き埋め操作の技術に対する信頼、仕事の段取りのよさというものが評価されたのでしょう。ぜひ救援隊にはがんばってほしいと思います。