先日、李纓(リ・イン)監督が作ったドキュメンタリー映画『靖国 YASUKUNI』をどう思うか意見を聞きたいと、テレビ朝日の『サンデープロジェクト』から出演依頼がありました。実は、この映画には文科省の外郭団体から助成金が出ている聞いたときに、「どうして、そんなもめ事をつくったのか」と感じたものです。靖国神社についての映画を中国人監督が制作し、それに日本政府が助成金を出したとしたら、もめるのは当たり前です。正直なところ、あまりコメントしたくないと思いましたが、「ぜひ」という要請があり受けることにしました。その際、事前に映画を見たいので、映画会社からDVDを送ってもらいました。
作品は、なかなかのものです。「おっ、これはスゴイ」と思いました。
第一に、靖国問題をめぐる参拝賛成者、反対者両方の姿を、コメントをいっさい入れずに、正確に迫力をもって編集してある。最終的には若干「反遊就館史観」(*)の部分はあるけれども、中立といっていいほどきわめて客観的に撮ろうとしていました。また、映像が「本物」です。
50代の中年女性が、「まだ二十歳の若い子たちが、“年老いたお父さん、お母さんよろしくね”と、遺書を書いて死んだんだよ。だから私は参拝してもいいんじゃないかと思うの」と、神社前のベンチに座り、日だまりのなか、ぼそぼそと会話しています。外国人が星条旗を持って「靖国万歳!」などと言っている場面もありました。日本軍に参加して死んだ父親の霊を返せと叫ぶ台湾女性の真の怒りは、迫力があった。私は中国語が少しわかることもあり、台湾なまりの彼女のその訴えに、鳥肌が立ったほどです。あるいは、戦没者追悼記念大会での真剣な参加者の表情、そこに乱入して「戦争反対! 靖国反対!」と叫ぶ若い日本人学生2人、そしてその二人をつまみ出しながら「お前ら、中国に帰れ、中国人だろう。とんでもないヤツだ、とんでもないヤツだっ!」と30回以上も叫び続ける追悼式典参加の男性。学生は日本人のようでしたが、追い出す方も真実正義、叫ぶ方も真実正義。
平らな心で率直に、どちらの立場の人間のことも見て、もう一度、靖国神社や戦争を考え直したり、議論したりする。そんないい機会になる映画です。それなのに、上映中止は実にもったいないことだと思います。
*遊就館…靖国神社内に併設されている歴史資料館。1882年に設立された。