道路特定財源から日銀総裁人事まで、論争の種にこと欠かないこの頃ですが、今後、最大の政策論争のテーマとして浮上してくるのは、年金の財源をめぐる方式についてでしょう。つまり、年金を税金で払う「全額税方式」か、それとも現行通り皆さんから保険料をそれなりに集める「社会保険方式」でいくのか、というテーマです。
保険料の未納問題や年金記録問題など、年金制度そのものに対する不信感が高まるなかでの議論だけに、与党内でもすでに緊張した議論が行われています。
これまでの与党・自民党vs野党・民主党の対立の構図をわかりやすく言うなら、民主党は「基礎年金は全部国で見てあげなさい、税金の中から払えばいいではないか」といういかにも“野党的”な案を主張し、政府側は「いやいや、そんなにお金はないし、国民は消費税を上げさせてくれそうもないし、されば従来の保険料方式しかあり得ない」というものでした。
ところが最近、状況がガラリと変わりました。これまでは、一見政府寄りであった日本経済新聞が、1月に「やはり“税法式”でやるのがいいのではないか」という論陣を張りました。それと平行して、自民党の中でも野田毅さんを中心とした『年金制度を抜本的に考える会』が「全額消費税で」という案を提起。これに財界も賛成しました。企業の年金保険料の負担軽減につながると見ているからでしょう。また、労働界も賛成ということで、いよいよこの方向で決まる……やに見えたのが2月10日頃まででした。
2月11日、あっと驚くようなことが起きました。
朝日新聞が、社説で「本当にそんなことができるのか? やはり保険料方式がいい」と主張したのです。
(詳しくはこちら: http://www.asahi.com/shimbun/teigen/teigen16.html)
これは、戦後の朝日、読売、毎日、日経、それと保守革新、与党・野党の論陣組み立て構図から見ると、まさに全く新しいカタチでしょう。朝日新聞はどちらかというと、「政府は国民の福祉を見なさい」「民主党の新しい案に魅力を感じる」というニュアンスの主張が多かったので、専門家の間では、まさに“あっと驚く”ような事件でした。
この社説でももちろん、消費税を上げて年金につぎ込んでいかなければいけないとは言っています。しかし、最大のポイントは、「そんなに何でもかんでも年金でいいのか? その前にまず医療と介護を考えるべきではないか?」ということです。
福祉財源を消費税で賄うのはいいけれど、消費税をアップした分をすべて年金に使えますか? それより重要なものは、万が一のときの病気、そして自分だけでは養いきれない老いた両親の介護。そこにこそ優先順位を与えるべきで、年金にはやはり“自助”という部分も必要なのではないかという論旨です。
もちろん、私も以前からこのHPで書いてきたように、年金を全額税金で賄うということは不可能だと考えます。今の公的年金の支給額は年間44兆、国税収入は50兆というなかで、仮に消費税を今後さらに10%値上げして15%にしたところで、毎年25兆程度の収入増にしかなりません。社会福祉全般に目配りをしバランスを考えると、やはり優先順位は医療、介護。であるならば、年金に関しては保険方式を維持するべきだというのが私の主張です。
この話をめぐっては、CS放送・朝日ニュースターの私の番組で、3月15・16日に取り上げます。朝日新聞で論陣をはった梶本論説委員、日本経済新聞の大林論説委員、『年金制度を抜本的に考える会』の野田さん、そして私の4人で大論争をしますので、ぜひご覧ください。