海上自衛隊のイージス艦「あたご」と、漁船「清徳丸」の衝突事故は、とても不幸な事件でした。今から20年ほど前、私の友人、瓦力さんが防衛庁長官だったとき、潜水艦「なだしお」と釣り船が衝突して、30名もの方が亡くなりました。その後、瓦さんが苦しみに苦しんで辞任をした当時のことを今でも覚えています。瓦さんの心の中には、取り返しのつかない大きな傷跡が残っているのではないかと思います。
今度の事故は、双方とも直進してぶつかっています。イージス艦は自動操縦だったとのことで、乗組員の心の中に、「自分たちは大きな船だし、小回りのきく漁船に避けて欲しい」という気持ちが、どこかにあったのでしょう。「清徳丸」と比べると、「あたご」は10倍以上の長さ、トン数にして千倍以上の格差があります。さらに、「自分たちは国家のためにやっているんだ」、「1回舵を切れば猛烈なエネルギーの消耗になる」というような、思い上がりがどこかにあったのではないでしょうか。
確かにそれは、ゾウ対アリみたいなもの。でも、ゾウだってかなり綿密に周囲を見回していないといけない。それを見落としたり、あるいは発見後「相手がどこかに動いてくれるだろう」というような気持ちがなかったのか。そういうところがポイントの事故だったと思います。