ビデオメッセージ ▲ 「ビデオ & メッセージ」トップへ
安倍政権について
2006年10月16日
このメッセージはテキストのみとなります。

安倍政権の初仕事で、日中・日韓の会談がありました。小泉首相の時代には首脳会談が開かれなかったのが、今回開かれるようになったのですから、大変よかったと思います。政策にバランス感覚が取り戻されているのだと、評価したいと思います。訪中の過程で中国側は、安倍新首相から「新たな政治的障害はつくらない」という心証を得たから招いたのだと言っていますが、その辺の舞台裏はよくわかりません。

しかし、安倍さんが「訪中したい」と言った瞬間から、安倍さんは中国の土俵に乗ったのだと思います。中国側としては「就任挨拶に行きたい」という申し出を断わることはできませんし、当然、招いたとしても中国側の主張は明確に発するつもりだったでしょう。現に、胡錦涛国家主席は「障害をつくらないで欲しい。中国国民の心の傷に想いをいたしてほしい」というメッセージを発しています。

その席で、さすがに安倍さんは「靖国参拝するかもしれませんよ」とは言えなかったでしょう。「行くか行かないか、行ったか行かなかったかは、明言しない」ということも、後に記者会見で言われています。 あの瞬間にボールは安倍首相に渡されて、今後は安倍さんが靖国に参拝したら、すべてその後の関係悪化の責任は安倍さんが負う──という構図になりました。これでもう、靖国問題で日中関係が揉めることはなくなったと予測しています。

全体としては、中国側がかなり大人の、かつ上手な外交をやったという印象です。「親中派」と呼ばれている私でさえ、「う〜ん、ちょっとねえ」と思わされます。おそらく、来年の参議院の選挙の前、特に今度APECが行われるその前の訪中が政治的に重要だと思った瞬間から、主導権は中国側が握ったのです。

それともうひとつ、訪中前1週間ほどの間、かつての村山首相談話や、従軍慰安婦に関する河野官房長官の発言問題などについて、安倍さんの話している言葉のニュアンスが日々変わっていきました。私はこれも政権運営におけるバランス感覚の表れとして素直に評価しているのですが、変わっていった経緯の説明は、されたほうがいいかと思います。決して皮肉で言っているのではありません。一国の首相として「言論を重く考えている」ということをメッセージとして国民に発してほしいからです。
「言論の自由」と「言論の責任」は、表裏一体のものです。「言論の責任」を軽んじているようなメッセージを国民が誤って受けとめてしまったら、せっかくのバランス感覚が台なしになりかねません。それを心配しているのです。