靖国神社問題について、このビデオメッセージで申し上げること、しばらくぶりです。
去年の4月に中国の反日デモがあった時に、私は朝日新聞の論壇に、これは言うなれば「このあいだの戦争をどう総括するかの問題だ」と言いましたし、それから「この判断処理を間違えると、日米関係にも少し摩擦が出てくるということを懸念する」と申し上げました。最近の情勢を見ますと、必ずしも間違っていなかったような気がいたします。
たとえばひとつ、この間の東京裁判というものを日本が認めるべきかどうか。その東京裁判で決められたA級戦犯の人々がなぜ裁かれたのか。あれは戦勝国による敗者に対する裁判ではなかったか。A級戦犯の人とて靖国に合祀されるべきだ、そして神として崇められるべきだというのが、靖国合祀派のひとつの理論的な根拠になっています。そしてその矛先は中国に向けられています。そしてあの極東裁判の時に、中国は本当に裁く権利があったのかということも言われます。
その通りなんです。あの当時中国は国境内戦で本当に極東裁判、東京裁判に正式にサインをするだけの余裕はなかったと思います。しかし東京裁判をあまり非難し続け、そしてその無効をあんまり強く叫ぶと、そしてそれを中国に叫ぶと、その中国の後ろにひとつの背後霊が見えてこないとも限りません。その背後霊はブッシュさんです。アメリカです。
あの東京裁判というのは戦勝国アメリカが中心で行ったものであり、主席、主任検事はキーナンというアメリカの検事でした。そしてそれに連なる国としてイギリスがあり、フランスがあり、その他の国があったわけです。つまり東京裁判無効論を唱えるということは、アメリカとの間のサンフランシスコ条約、そして日米戦後体制というその骨格に異議を唱えることになります。外交の、そう戦後日本の外交の基礎の上にある“日米協調”というものに大きな疑問符を付けることになるのです。
靖国神社問題は日中・日韓問題を超えて、日米問題になりかけているということを最近つくづく感じます。アメリカの世論も新聞も、そして日本を知る知日派の学者さん、ジャーナリストの人、そして最近はロイド上院外交委員長まで加わっての小泉首相靖国神社参拝反対の声の上がり方です。やはり外交をやる時には、歴史を考えて外交をやらないと、一国の政治家としては大きな間違いを犯すことになる。それを教えてくれている昨今の情勢だと思っています。
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