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「小さな世界」
2002年11月05日収録
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自分が学生の時からずっと考えてたテーマですけども、日本にとってアメリカと言うのは大きな国でその動向、政治、そして日本に対するアメリカの態度、方針変更は大変な意味を持つと思ってきました。もちろんそれはまず経済がそうだった訳で、アメリカが日本から物を買わないとなると不景気になって失業が増えてみんな生活水準が悪くなる。そういうのが初期で、そして最近は外国政策の面でもアメリカの方針にそう簡単に逆らえないのではないかと言う気持ちが我々の中にあるわけです。

一方、アメリカにとって日本はどういうものか。いつも日本について報道されているのか。アメリカのどういう人たちが日本に対する政策を決めているのか。これは永遠のテーマです。今度、実際に来てみて比較的長く逗留して色んな人に会ってみるとやはり日本に関する専門家は限られていて、少人数の人たちで対日政策は左右されるのではないかという印象を非常に強く持ちました。そしてそういう人たちの間でちょっと意見が交流されるとアメリカの対日政策というものが一挙に決まってしまうという印象をまた強く持ちました。

そういう人たちは主にハーバード大学とかコロンビア大学とかカリフォルニア大学そういうところで教えています。それからワシントンに行きますとブルッキングスとかCSISとか、いわゆる研究所・シンクタンクで色々研究しながらまた講演をしたりしてます。そしてそういう人たちが政権交代と共に民主党政権に入ったり、共和党政権になると共和党政権の国務省の高官になったり、大統領のアドバイザーになったりします。そういう人たちで構成されている極めて小さな世界ではないかなと今回も思いました。

例えば一週間ほど前にニューヨークタイムスに珍しく日本についての大きな記事がふたつ載りました。経済面の1面に2つがどんどんと出たのですが、そのテーマは「ゾンビ」つまり魔法の力で生き返させられた死体です。なんか数年前から日本でも時々このゾンビという言葉が使われていますけれども、そのニューヨークタイムスの1週間前の記事は「日本ではゾンビが生きている生きてると叫んでいる経済構造になっている」という訳です。まあ本当を言えば倒産せざるえない企業が政府の力、銀行の力で血液を与えられて短時間「まだ生きてるよ」叫んでいる。そして、それは結構大きな企業だという意味なのでしょうが、まあそれが正しいかどうか別にして、その記事が出た朝私はハーバード大学のジョセフ・ナイ氏(ケネディスクール学長)に会いました。この方はこの間まで国防省におって高官を勤められ民主党の政権ができると国務長官になるだろうと今でも言われている有力な人物ですが、「加藤さん、しばらくでした。ところで日本経済はゾンビの経済になってますが・・・」っていうから「えっ!」って言ったら、「いやゾンビですよ」って言うから「あぁ」と思ってその日の朝の新聞の事を思い出しました。ハーバード大学やボストンの日米協会の人たちの何人かが、また「ゾンビ」と言いました。ヴォ―ゲルさんも「ゾンビ」と言いました。そして翌々日コロンビア大学に帰ってきたらコロンビアの教授たちも「あのゾンビの記事見たか」と言って「ゾンビ、ゾンビ」と言ってます。

実は不良債権問題というのも日本の中で議論されて、それが東京で英語に翻訳されてアメリカに輸出され不良債権問題というのがアメリカで議論される。そうするとアメリカも不良債権が根本だと言ってるようだしと言って日本に輸出されてくる。またそれをプレッシャーとして日本が感じる。ということがあります。4、5年前ですけど日本国内で減税する事が景気対策だといわれた時、それがまたアメリカにはね返ってアメリカで主張されてまた日本に戻ってきて「減税こそ日本の景気対策の根本だ」としばらく日米で言ってたことがありました。

私が今日言わんとしていることは、アメリカの対日観というのもかなりの限定された小さな世界で作られる傾向があること。そしてそれは日本から送られてくる報道・評論にかなり影響される部分が多いということです。日米間で一定の意見を互いに拡大再生産をしていることです。日米関係は重要ですから、アメリカの見方を大切に思わなければいけないけれども、金融政策とか、年金政策とかの国内政策は、自分自身がどういうふうに感じるか、どうしたらいいか、日本を一番わかっているのは「日本人」ですから日本の国内の政策議論をしっかりと進めることが重要なことだと思います。

※この文章は2002年11月05日に収録した映像の内容を文章におこしたものです。