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一人一人の可能性を十分発揮できるような政治をやりたい
「問題の所在に気がついた時には解決が始まっている」(大平正芳)
加藤紘一・宏池会会長・元自由民主党幹事長
経済政策の大転換を訴えて
皆さん、明けましておめでとうございます。
昨年は、総裁選挙に立候補するかしないかとか、大変皆さんにご心配をおかけいたしました。少しおとなしく常識的にやっていたほうがいいんじゃないのということを大分言われました。私も大分考えましたが、やはり今や一番必要なのは、この先こうすれば大丈夫だということをお互いに議論し合うことではないかと。いっときの公約張りというのではもう限界が来ているということをお互いに語り合おうという意味で、立候補し、それを議論できるようにトライしてみました。残念ながら議論のほうはなかなか十分にできませんでした。日本の社会にあって、特にメディアなんかに出ますと、やっぱり同じテレビの時間でも、総理というのが出ると、「総理、いかがですか」みたいにキャスターがなってしまって、総理が長くしゃべるし、議論がかみ合わないまま物が進んでいくという、まだまだアメリカのプレジデンシャルディベートみたいなことにはならないなと思いつつ、しかし一石は投じたかなと思っています。
それから、その後の結果
につきましては、八五票という票でしたけれども、ほんとうに勇気づけられる結果
でありました。私としては、心の中ではいい戦いができたし、それなりの手ごたえが党内的にはあったなと思っています。でも、票を入れたのがどういう人だったのかと今でも聞かれるんですけれども、私自身もわかりません。多分この人は入れてくれたに違いないという人に、2カ月か3カ月たって人目のつかないところで「どうも」と言いますと、「いや、私は入れなかったんです」と言うのです。(笑)ところが、その方が中に立った仲介者には「実は入れたんだけれども、加藤さんには否定した」と。とにかく支援したということが公になりたくないという感じで、だれが私に投票したかということがわかってしまうと、その方の政治的な生命が危なくなるような雰囲気の党になってしまっているというのは、よくないなあと思います。
でも、考えてみれば、現職の総理大臣にチャレンジするというのは25年ぶりぐらいだそうですから、そういう激しいことを自分自身がやったのかなあと思ったり、複雑な気持ちです。
ただ、一つはっきり言えることは、「あなたに入れるから」と言って恩を着せながら入れてくれた人はほぼゼロということであって、私たちが、私が言っていたことに陰ながら支援して入れてくれた人が、そういう危ない橋を渡りながらいたということは十分心にとどめて、責任を感じていかなきゃならんのだと思っています。
全体的に言えば、よかったなあと、自分では決算書を心の中でしたためております。皆さんも大体そんなふうに思い始めてくれたころ、1月8日(鶴岡での講演)にまた変なことをしゃべって世の中を大騒ぎさせているんじゃないかと、あんまりはらはらさせないでくれと、世の中けんかをすればいいというものじゃないでしょうと言われたり、私たちのグループの中にも、公明党とうまくコンタクトをとりながら、少しでも票をとって今度当選したいと思っている人もいるものですから、「会長、少し控え目に」というようなことを言われたりしております。正直なところを言うと、新聞でどでかい見出しになっていますが、あんなことを私は言っていないのでして、これはメディアと私たちの特殊な関係だなあと思っています。
私が申し上げたのは、地元の新年会で50分ほどしゃべったのですが、80%ぐらいは、少し経済政策の大転換をしないと、いつまでもいつまでも公共事業をやっていなきゃならんみたいな話になって、いけませんねと。それに、特にその必要性が感じられるのは、次に選挙があるからですと。今の自自公というのは必ずしも評価が高くないと。だから、ここで自自公をやめてしまうというのも一つの手だなあ、そうすれば、自自公がテーマの総選挙にはならないから。しかし、現執行部では多分できないでしょうから、そうなれば、将来この国のために何をしなきゃならんということを明確に言って、それを必死にやるから支援してくれというその訴えで、自自公テーマよりも、改革路線のよしあしをテーマにしないと危ないですよということを言ったのですが、自自公の評価が今ちょっと必ずしも高くないので、ここで解消して選挙に臨むのも一つだが、それはちょっとできそうもないのでと、この一行のせりふのこの部分がダーンと見出しになるんですね。
正直言いまして、我々も政治家ですし、特に「サンデープロジェクト」の出演回数というのは、過去10年のあの番組で私が圧倒的なトップなんだそうですが、ああいうちょっと一言を間違えると政治生命がなくなるような番組にそうやって出て、生き残ってきたぐらいですから、ある種の永田町政治部メディアのプリズム角度というのが、計算しつくしてしゃべっているわけで、私はそれがうまいほうなんですけれども、さすがにあの一言であんなにどでかい記事になり、それに野中幹事長代理がわあっと、「信頼感が傷ついた」なんて京都で演説するものですから、また世の中が騒ぎになりましたが、これはもう放っておくしかないと考えています。
とりあえず、私の演説の全文を自分のインターネットに載せて、それで判断してくださいよと。これからはメディアも重要だけれども、きょうの佐治さんの話ではないけれども、インターネットを通じての情報拡散、伝達というのも一つだなと思って、去年のクリスマスに初めて開きました私のインターネットのホームページ、www.katokoichi.org
は覚えてください、それに載せましたら、載せた日には、正直言って、6,000件のアクセスがあったというから、強烈なアクセスだったと思います。それで、私のその問題のホームページ、演説のテキストまで行ったのが4,000人ぐらいのようなんですが、おそらくそれはかなり政治に関心のある人が読んでいるわけですから、多分政治家の発言と報道と政治家の反応というものについて、一体これがこんなに騒ぎになることなのか、そして報道になることなのか、よく見るとこのスピーチの一番重要な部分というのは、『週刊文春』の梶山論文と似ているのではないかと。実は、そっちのほうがかなり激しいことなのではないかと思ってくれるのではないかと思います。
私はそのスピーチの中で申し上げたのですが、「二兎を追う者は一兎を得ず」と小渕さんが言っていると。これはちょっとまずいんじゃないかと。景気対策だけを追う、構造改革や財政再建はしばらく放っておくと総理大臣が演説しているものですから。実は、公共事業というのは、予算では伸びていないんですよね。圧倒的に伸びたのは何かというと、預金保険機構につぎ込まなければならないお金を先送りしないで、現在ぼんと入れちゃったということで、これで一般
歳出は伸びているのと、それから、科学技術予算がかなり伸びているんです。例えばバイオテクノロジーというのは、DNA分析の世界はここ1、2年が勝負であることは皆さん識者の方はご存じですけれども、そのために660億の新たなお金をつぎ込んでいるんですね。だから、大蔵省や通
産省や科技庁や役所は、かなり前向きの、いい予算を決めているんです。
ところが、総理が、「いやあ、とりあえずは景気対策一本で、将来のことまで追いかけていたら意味がありません」と演説するものだから、そんな予算は一つもないようにみんな思っちゃう。特に少しうるさい政調会長が、ばらまきがなぜ悪いみたいなことを言うものだから、そうすると、いかにも後しかみていないばらまきの予算みたいにみんな思っちゃう。そこが問題じゃないですかということを私は演説して、だから、もうちょっと先のビジョンと先に向かって歩き始めているんですということを言わなきゃ選挙に負けるよということを演説しているというのが、ほんとうでございます。実は、繰り返しますけど、梶山さんから論文が送られてきて、『週刊文春』に出すから見てくれと言うので、ちょっと読んでいなかったんですけれども、近々梶さんに会うことになったものですから、よく読んでみたら、かなり私と感覚的に同じことを書いてある。少し冷静になると、だれでもそういうことなのかなと思います。
教育問題がこの国の最重要課題になってきた
きょう、佐治さんのお話を私も聞いていて、かなり難しい高度なものだと思うのですが、あの中で講師の佐治さんはさらっとした言葉だけれども、あっと驚くようなことを言っています。要するに、国が発行する国債がトヨタ、ソニーよりも評価が低くなって、高利回りにしないと皆さんが買ってくれないときが来るかもしれませんなんて、一行をさらっと言っていましたけれども、あれはたしかソブリンレーティングという格付、つまり国の格付は必ずその国の企業の格付よりも高いのであってということを、ここ2、3年、習ったことがあるように思うのですが、その大原則さえも崩れてしまうほど国の信用が落ちるかもしれませんよと、彼は言ったんですよね。
それから、来年の後半に、アメリカのウォール街の金はいろんな経過を経て、去っていくかもしれませんと。そのときに、日本に来るとは言っていませんでしたね。ヨーロッパに戻っていくんじゃないかと。そうしたときに、大丈夫なのかなあと。
それから、今日本の中ではいろいろまだ不健全なことが僕は起きていると思います。一株が一億円になるとか、それから、ほんとうに数少ない有名な魅力がありそうなベンチャーなものですから一株7,000万とか、あんな形になっているというのは、どこかやはりごくごく当たり前のそれなりの努力をしているベンチャーにお金が回る仕組みがないからだという佐治さんの指摘はそのとおりなので、その辺をずっといろいろ考えてみると、これから本年、それから2、3年かけて、我々がどうやって自分の責任、リスクで企業をやり、またお金を貸してあげるか。銀行の審査を通
じないでも、直接市場でお金を投入する風土ができるか。どうしてもそれが難しいならば、中小企業を格付する会社ができてほしいと彼はおっしゃっていましたけれども、そういうものがほんとうにできるのか。
つまり、日本のシステムが今、ほんとうにぐるぐる変わりつつあるんだと思うし、変えていかなきゃならんのだと思います。やらなければならないことというのは山ほどあって、そして、最後には私は過去一年を一生懸命考えると、教育の問題に戻っていくのかなあと思っています。小中学校義務教育がなぜ公立主体でなければならんのかといったら、私は答えはないんだと思います。私立が増えてもいいんだと思います。私立は高いといったら、入っている生徒数に応じて国が一人当たりの教育費を、市立学校に渡すと同じように私立学校に渡せばいいわけで、その金額を渡さなくても八割渡すだけで、おそらく小中一貫のものすごくおもしろい小中義務教育ができるんじゃないでしょうか。
考えてみれば、私がいたころの日比谷高校はよかった。なぜかというと、校長先生が菊地龍道という人で、20年間校長をやっていたんですね。それで、やっていることが、東京都の教育委員会なんかとは全く関係ない、授業を120分やってみたり。それは高校生ぐらいになると、興味というのは非常に柔軟で、伸び伸びと興味が走る。一回教え始めると、50分ぐらいでとめちゃおもしろくないというので、120分授業をやっていたわけですね。そして、それを見て東京都の小尾さんという当時の教育長が、学区制をつくっていったわけですが、あのあたりから日本人のいわゆるクリエーティブなマインドというのがフレームワークの中にコントロールされることになったのかと思っています。
品川区で小学生が減ったそうです。そこで、通
学区域制度をやめて、品川区民ならどこの小学校に行ってもいいということをことしから始めました。おそらくこれで完全にあく小学校ができると思います。あく中学ができると思います。だったら、それは、土地代を除けばほぼただみたいなものでしょうから、私立学校経営者に安く差し上げて、そこで教育させてみたらどうだと。おもしろいことになると思いますよ。そして、20年も続けてやる校長さんが出てれば、スポーツの立派な小学校ができるかもしれんし、芸術かもしれないし、それこそ進学に一生懸命やるところとか、いろいろ出てくるんじゃないかなと思います。
ですから、この国が、今みたいなことをやるには、お金が要るかといったら、お金は要らないわけですよね。今まで義務教育に使って、市町村を経由して出したものを私学経営者経由で出せばいいわけだから。
だから、私は、お金を使えば景気がよくなるというのは、使ったほうがいいと。しかし、あんまり効率が出ない中で、あくまでもお金を使うか使わないかの悩みばかりやっていると、お金を使わなくてもやれることがいっぱいあるというところに目が行かなくなっちゃうことが一番心配なんじゃないかということを訴えたいんです。ところがちょっと改革的な構造改革の話をすると、すぐ、景気が悪くていいのか、それから財政構造改革の昔の大蔵省みたいになっていいのかみたいな議論になって、ほんとうに宝の山が山ほどこの国にはあるのに、それの掘り起こしに行かないということが問題なような気がいたします。
それも我々の説得力のなさということなのでありましょうから、ことし一年間は伝導者のごとく、また寺の僧侶のごとく、同じことを相変わらず説き続けるかもしれませんが、あるときには鹿児島で、あるときには山形で、あるときには北海道大学のクラーク会館で、そしてあるところでは静岡で、どんなポジションにいるかもしれないけれども、この国をどこに持っていかなきゃならんということはもう大体見えたわけですから、ただ、それをやるかやらないかの話だけでしょうから、このミッショナリーみたいな仕事をこれから1、2年、一生懸命やって、この国をもう一回、個人の持っている可能性を解き放てるような政治をやりたい、そんなことを考えながら新年を迎えました。そうしたら、2000年のせいでしょうか、ことしほど多くの人々が、多くの新聞が、雑誌がこの国のあり方を論じた新年はなかったように思います。
大平正芳さんが言いました、「問題の所在に気がついたときにはね、そのときって、解決が始まっているんだよ」と。そういうことを、我が親方、大平正芳はううっというようなことを言いながら言っていましたけれども、だんだんみんな問題の所在に気がついてきたから、この国は明るくなると思います。そうしてまいりたいと思います。
また、本年、皆さんに物心両面
に、また各方面にわたっていろいろお世話になると思いますし、選挙もある年でございますので、大変ご支援方、いろいろ失礼なこともあるかと存じますが、一生懸命政治の世界で頑張ってまいりたいと思っておりますので、ご支援をお願いし、長くなりましたが、新年のごあいさつにいたします。
どうもありがとうございました。(拍手)
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