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動画タイトル 動画 ♦ 名作『おくりびと』が生まれた庄内 56k 128k ♦ 東京の美術と庄内の棟梁でつくるセット 56k 128k ♦ 全員が庄内ファンになって帰っていく 56k 128k ♦ 「公」を考える庄内の人たちに支えられて 56k 128k 2008年10月28日収録
- ■ 庄内映画村株式会社
- 庄内の企業が中心となり映画文化の発展と地域の活性化を目指して、平成18年7月7日設立。現在、101の法人・個人が株主となって運営されている。これまで、『おくりびと』をはじめ、『蝉しぐれ』『山桜』『ICHI』などの映画支援を行ってきた。鶴岡市羽黒町に広大なオープンセットをつくり、今後も大作映画の撮影予定が決まっている。
- 加藤:今日はどうも、ありがとうございます。
- 宇生:こちらこそ、お世話になっております。
- 加藤:『おくりびと』が東京でヒットしていますね。あれは酒田で撮ったのだろうなという感じが画面から感じられますが、どこなんですか?
宇生:基本的には庄内全域で、ポイント的にも酒田が特に多いというわけではないですね。ちょうどあのときは藤沢周平先生の『山桜』、ちょうど公開を始めましたが(10月25日公開)女座頭市の『ICHI』と、3本が同じ時期に重なったんです。4月、5月、6月です。鶴岡のホテルがパンパンになってしまって、それで酒田にお願いして、酒田を中心にスタッフ部屋を用意して、酒田が活動拠点となりました。撮ったところは庄内全域ですね。- 加藤:『おくりびと』の主演の本木(雅弘)君が河原で石を拾っているシーン、あれはたぶん松山ではないかと思うのですが?
- 宇生:月光川(がっこうがわ)ですね。
- 加藤:ああ、やっぱりね。鳥海山が見えるから。
- 宇生:はい。
- 加藤:それで、最後にお父さんが亡くなったときに、石を握っているというものですよね。
- 宇生:「石文」というものですね。「石の文」ですね。
- 加藤:原作は、誰なんですか?
- 宇生:小山薫堂さんですね。今だと、そうですね…、放送作家という肩書きなんですが、いろいろなことをやられています。たとえば世界遺産のものをやっていたり、昔は『料理の鉄人』の企画をしたり。テレビ業界では超一流の人で、知らない人はいないというぐらいです。まだ40代ぐらいだと思いますが。
- 加藤:よく、あんなテーマを、あそこまで…。普段なら何となく暗い、ちょっと避けたいというテーマなんだろうけれど。
- 宇生:ある原作がありまして、最初は本木さん自身がその原作を読んで、これを映画にしたいということで持ち込まれたんですよ。それで、原作を使おうかという話になったのですが、原作者となかなか折り合いがつかなくて。それで、この企画はどうなるのかというときに、小山さんが全部(シナリオを)起こしてみましょうということで一から起こして。「石文」というのも、小山さんが考えたものなんです。
- 加藤:そうなんですか。
- 宇生:たぶん、どこかに資料的には「石文」はあったのでしょうね。
- 加藤:今の話を聞くと、映画というのは、いろいろな形でスタートするのですね。
- 宇生:そうですね。主演俳優さんが(案を)持ってきて、自分が主人公でやりたいとか。今回は、最初から小山さんの頭の中には、本木さんしかいなかった。本木さんをイメージして全部書いているから、内容と彼の演技がピッタリなんです。本来は、シナリオがあって、このシナリオに合う主人公はということでキャスティングを決めていくけれど、最初から本木さんありきでした。たぶん、山崎(努)さんも最初から決まっていたと思います。それで、奥さんを誰にするかということで、通常の形で(キャスティングをして)、広末さんにお願いしました。
- 加藤:なるほどね。『山桜』、これはまだ公開されていない?
- 宇生:公開されていますね。
- 加藤:ウケはいかがですか?
- 宇生:非常にいいですね。映画の公開には2つパターンがありまして、東宝さんや松竹さんは「全国ロードショー」といって、200何館でボーンと上映する。けれども、「単館上映系」といいまして、だいたい最初は全国の50館ぐらいで流して、それで評判がいいと話題を呼びながら、ずっと公開をしていくという映画の公開方式があります。『山桜』は、単館上映系で50館からスタートして、今150館ぐらいになっていますから、単館上映系としては大成功だと思いますね。
- 加藤:
そうですか。あの『山桜』の木はどこにあるのかということで、宇生さんに案内してもらいましたね。 - 宇生:はい。それで、僕は最初に、「先生、行かない方がいい」と言いました(笑)。映画の撮り方というのは、何しろ4トン機材車が入るか、入らないかから始まります。山の中に車が入らないと、照明機材から何から機材が運べません。なるべく4トントラックが入るそばで撮りたいわけです。ですから、ご覧になっていただいたように、「ああ、あのガードレール、全部隠したんだ」というふうに(笑)。
- 加藤:あれは江戸時代の話ですか?
- 宇生:そうです。
- 加藤:江戸時代に山桜の足下にガードレールがあったらね(笑)。
- 宇生:そうですよね。ですから「行かれますか?」というふうに…(笑)。
- 加藤:あとで写真撮ってもらいましたね。あれはガードレールを消してくれたの?
- 宇生:写らないように低く撮りましたから。カメラアングルとしては低く撮りました。
- 加藤:僕の写真としては、非常に雰囲気がある。
- 宇生:花吹雪の中で、という感じですよね。上手く撮れたなと思いますけれど。
- 加藤:うん。ありがとうございました。
- <事務所だより>「山桜」見学 平成20年4月27日(日)
- 加藤:庄内の映画村に、この前、あなたに黙って行ってみたんです。
- 宇生:すごいでしょう?
- 加藤:すごいね。
- 宇生:たぶん、日本で1番のオープンセットだと思います。広さが26万4000坪、東京ドーム20個分あるオープンセットですから。
- 加藤:あれは、まだまだいろいろなものに使えますね。
- 宇生:はい。来年も(撮影が)立て込む予定です。映画村は山の中なんですけど、直線で350メートルの漁村、それと直線200メートルの宿場町があります。それはたぶんオープンセットでは日本一、いちばん大きいと思います。実際に、町を修復して宿場町をつくったというところとは比べてはいませんが、つくり込んだオープンセットとしては日本でいちばん大きいですね。
加藤:ああいうのはつくって、あとは壊しちゃうわけ?- 宇生:いえ、いえ。『ジャンゴ(スキヤキ・ウエスタンジャンゴ)』と、『女座頭市(ICHI)』のセットは、残すつもりはなかったというか。とりあえずあそこの広い土地にポンポンとつくって、『ジャンゴ』のセットは全部解体というか、移動させながら宿場町のセットをつくったんですね。ただ、後ろが張りぼてで、垂木で抑えたようなものだったので、雪に弱くてもたない。ここまでつくるなら、ちゃんと作って欲しいと、東京の制作会社にお願いしました。ちゃんとつくって残して、いろんな人に見せた時に利益があがるようにしますから、本格的にと。だから、今回は全部本格づくりです。
- 加藤:見に行ったら、セットをつくっている棟梁たちが地元の、旧羽黒町とかの人たちでした。あれは、とくに映画用の建物を建てる特別な技術というのがあるわけではないんですね?
- 宇生:あの、こうなんです。美術をやる人間が、どういうセットにするかということで時代考証を全部行って、いろいろな資料の中から設計図を引きます。その後に、地元の大工さんたちが、設計図通りにつくるわけです。「屋根の勾配は、本当にこれでいいか」とか、「いや、こうだろう」とかやりながら。その後に、装飾という部隊がいます。装飾の部隊は東京から来て、地元の人たちにも手伝ってもらいながら、たとえば古く見せるために杉の新しい板をバーナーでバーッと焼いて、鉄のブラシで全部こすって年輪を出す。そういうことが、美術の指示によって、装飾部の指示によって行われます。
- 加藤:じゃあ、だいぶ東京からいろんな人が庄内に行っているんだ。
- 宇生:かなりの人たちが。
- 加藤:最近の飛行機は混んでいるんだけど、映画づくりの人たちもかなり入っているんですね。
- 宇生:そうですね。
- 加藤:
最初、庄内空港をつくるときに、「客がいないからつくらないでください」って、運輸省とか飛行機会社から言われたけれど…。最初は1便、2便、そして3便。4便まで行くと思わなかったけれど、今は5便をつくってくれると。 - 宇生:それは、先生の先見の明があったからで。もし、飛行機がなかったら僕らもあそこで映画の撮影ができたかどうかわからないですよ。
- 加藤:ああ、なるほど。
- 宇生:というのは、東京からのスタッフで、現場をやる人間たちは全部車で来ますから飛行機なくてもいいんですけれども、俳優さんたちはしょっちゅう往復をしなければならない。こっちの現場だけで撮っているわけではなく、テレビがあり、ほかの映画があるかも知れない。とくに、これは自負ですけれど、(庄内映画村に)呼んできている映画は、中途半端な映画ではないので、一流の俳優さんたちが入ります。『山形スクリーム』のときは、45日間で230往復ですからね、映画の人たちが使った便数が。だから、庄内空港あっての山形映画村です。1時間あれば行ってしまうから、忙しい方でも、たとえば午前中に映画の撮影をして、午後からテレビの録画とかできる。電車とか車ではとうてい無理で、映画を撮っているときにそれだけの時間がかかったら、一流の今売れっ子の俳優さんたちは来られないと思います。物理的に。ヘリコプターにでも乗ってこないと(笑)。
加藤:売れっ子の俳優さんたちがいるんだけれど、「来たっ!」とかいって、みんな集まってきたりしてます?- 宇生:それをなるべく公表しないようにしても漏れますからね。俳優さんのなかでも、事務所によってはなるべく人と避けたいという事務所もあるし、そういうのは全然関係なく大喜びでピースしながら空港で撮影して下さる俳優さんもいる。さまざまですね、事務所の考え方、俳優さんたちの売り方ということで…。
- 加藤:我々、知らないところ、気づかないところでみんなが庄内に来てんだ。それも有名な俳優さんたちがね。
- 宇生:そうですね。来年撮影する映画が何本かありますが、かなりの俳優さんたちを呼ばないとできないストーリーがあります。
- 加藤:庄内に来て、俳優さんたちはなんて言っています?
- 宇生:僕が知る限りでは、全員庄内ファンになって帰って行かれた。
- 加藤:食べものがおいしいからでしょう。
- 宇生:おいしいですね。桃井(かおり)さんなんて『ジャンゴ』のときに5キロ太ったって、撮影中に。
- 加藤:
どこで何を食べたんだろう? - 宇生:あの人はお酒好きですからね。「おいしい、おいしい」って言って、長いもなんて絶賛だし、お米も絶賛でした。それで5キロ太って。久しぶりにこの前、桃井さんに会って「桃井さん、痩せましたね」って言ったら、「何言ってるの宇生さん、私、これが普通なのよ。あのときは食べ過ぎたのよ」って(笑)。「あ、そうだったんですか」というような(笑)。佐藤浩市さんとか、伊藤英明さんとか、みんな鶴岡の駅前のスナックで朝まで酒飲んでいたとか。お客さんが行くと、「佐藤さんが来ていますよ」ってメールを流して、みんなが集まってきてみんながドンチャン騒ぎやるとか。けっこう駅前は盛り上がったみたいですね、いらっしゃる間は。
- 加藤:そうそう、酒田とか鶴岡とか、我々の地域はそうなんですよね。どこどこで何かイベントをやっているぞ、おもしろいぞというと、連絡し合って30分で人が集まる。
- 宇生:すごいんですよね。
- 加藤:こういうのって、いいよね。
- 宇生:ええ。だから、ビックリしている。よく行く韓国料理屋さんがあって、竹中直人さんを連れて行ったんですよ。竹中さん「うまい、うまい」って言って食べていただいて、翌日、僕が床屋に行ったんです。韓国料理屋からはえらく離れたところに。「昨日、なんか竹中さんがいらしていたみたいですね、あそに」って話になって(笑)。「なんでそんな話を知っているの?」っていうぐらい。
- 加藤:翌日には伝わりますから(笑)。狭い世間だけど、またそれいいのかもしれない。
- 宇生:俳優さんたち、それから今回、これだけ一地方に、『蝉しぐれ』から始まって13本になりますけれど、これだけ来るというのは、東京の制作会社が庄内を好きでないと。東京側の人たちが庄内人のファンになって、俳優さんもファンになるし。それから『蝉しぐれ』のときから、現場をやる制作の人間たちが入れ替わり立ち替わり来てますから、庄内で撮影をやるというとすぐに手を挙げて「行きたい」という。なにしろ食事はおいしいし、みんな親切にしてくれるし。
- 加藤:酒田にロケを一生懸命に呼ぼう、そしてそれを応援しようと、NPOかなんかができているんですよね。
- 宇生:そうですね。「NPO法人 酒田ロケーションボックス」ですね。あれは、『おくりびと』のときに立ち上がったんです。
加藤:ああ、そうなの。- 宇生:立ち上げていただいたんです。僕らが(映画を)3本抱えてしまったので。2本だけでも悲鳴を上げているのに、3本はとても面倒が見られないので、ぜひいろいろなことを協力するから、酒田でなんとかみんな協力してやってくれといって、それがきっかけで「酒田ロケーションボックス」が出来上がったんです。
- 加藤:私の知り合いの市会議員は、『おくりびと』の最後のシーンで、お葬式のエキストラになったといって、会うたびに自慢しているんですよ。「2カットも出た、2カットだぞ」って(笑)。
- 宇生:それは、たいしたもんです(笑)。庄内には鶴岡と酒田があって、それぞれの持ち味がぜんぜん違うので、映画人にはとっても魅力的な場所だと思います。日本海があって、平野があって、山は奥が深いですからね。
- 加藤:そうそう。
- 宇生:僕なんか『蝉しぐれ』のときにロケハンをしていて、鳥肌が立つような山奥がいっぱいありました。これ以上絶対に入ってはいけないなというところが…。なかなか今、そういうところがないので、ロケの宝庫ですね。さっき先生がおっしゃったように、庄内湾から揚がる魚はおいしいし、お米はおいしいし、野菜もおいしいし。あとは、やっぱり人ですね。いろいろ考えてみると、「公の人」とでもいうんですかね。『蝉しぐれ』のなかで、文四郎(市川染五郎)の父親(牧助左衛門)役で、亡くなった緒方拳さんが「文四郎は父を恥じてはならん。“私”ごとではなく、“儀”のためにやったことだ。文四郎は父を恥じてはならん」と言って切腹します。庄内には、あの言葉に共通するような方たちが山ほどいます。「儀」というのはイコール「公」だと思うんですけれど、「私ごと」ではなくて「公」のことを考えられる人たちが。だから、今、うちの株主というのは庄内を中心に101の企業が集まって株を持ってくれているから、映画村が成り立っているわけです。そういうことを進んでやっていただける「公人」が多いなという感じですね、どこよりも。あの方たちがいたので、映画村ができたし、これからも映画村でやれるだろうなという感じです。
- 加藤:我々の知らないような我々の郷土、庄内の魅力を映画づくりの中で発見してくれているような気がしますしね。
- 宇生:我々の撮影チームも、庄内から力をいただいて撮影できているという感じがします。
- 加藤:
そして最後に、撮影チームが夏に来たら、一つだけとっておきの贅沢をお知らせしますね。鳥海山がなだらかに平野に裾を広げるように下りてくるでしょう。あそこ、ちょっと不連続なところがあるんです。少しカクッとなっている。この等高線に従って水が出ているんです、壁面から。みんな清水から上から川で流れてくると思っているでしょう。そうじゃなくて、本当の水というのはそこからピッと出てきている。 - 宇生:湧き水ってことですか?
- 加藤:湧き水が。そこをみんな、水を汲んで飲んで歩いている。その水を汲んで酒田や鶴岡のクラブとかバーは、水割りの水にしている。
- 宇生:じゃあ、おいしいわけですね(笑)。
- 加藤:そこをずっと飲んで最後に吹浦の海岸に行くと、そこにも清水が出てきます。事前に岩牡蠣を冷やしておいて、水を飲んだ後、海岸に行って最後にそこで白ワインを飲むという…。
- 宇生:最高の贅沢ですね。
- 加藤:最高の贅沢です。
- 宇生:8月はまた大量に俳優さんたちが来ますので、ぜひ。
- 加藤:それでは、また。
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