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レポート:第10〜12回・北海道

3月10日、11日の両日、北海道に行って来ました。このところ、日本列島は、徐々に春の気配を見せてきていますが、ここ北海道は依然として真冬。山野は、見渡す限り雪に覆われ、街中の道々には白い壁が高くでき、そして歩道はといえば、踏み固められた雪で、まるでスケートリンクのようです。雪国・山形育ちの私も、滑らないよう、転ばないよう、一歩一歩、足元を確かめての前進です。
■ 北海道大学
最初の訪問地は、10日午前、北海道大学法学部政治学研究室。政治学を専攻する教員・研究者と大学院生からの、お招きです。紹介の労をとっていただいたのは、友人の山口二郎教授。学内は、春休みのせいか、それとも研究棟のせいか、ひっそりと静まり返っています。会場に充てられた、大きめの研究会議室は、さらに静寂で、22名の政治学者とその卵の人たちが、普段のゼミナールと同じ感じで、クールに待ちうけています。討議のテーマは、「自民党の現状と課題」。最初に、私の方から問題提起をしました。
「自民党の現状は、かなりきびしい。これまでにも、田中金脈、リクルート事件、佐川急便事件と、いくたびかの危機を迎えてきたが、そのつど、党内闘争や若手の決起などによって復元してきた。だが、いまはそれが見えない。小選挙区制によって、党執行部の支配力が強まり、議員は官僚化してしまっている。それでも私は、党内に改革のエネルギーが残っていないか、それを、いま見極めようとしている」。
「自民党のみならず政党の支持層、支持基盤も、大きく変わろうとしている。個人個人が自分の考えで投票するようになり、宗教票以外は、いままでのような集票マシーンは機能しなくなっている。先の総選挙での1区現象がその典型で、今後、2区、3区現象が起きるかもしれない。政治学にとっても、フィールドワークがむずかしい時代に入ったと言える」
「選挙以外の方法で、自己改革ができるかどうかが、自民党の課題、いずれにしても、まれにみる政治変革期で、政治学の分析、研究対象としては面
白い状況だと思う」
質問者は、それぞれイギリス外交史、ドイツ政治論、ヨーロッパ政治史などを専攻している、と名乗りながらの発言です。以下は主な質疑応答の内容。
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Q:
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小さな政府で生ずるであろう、失業問題は。 |
| A: |
ワークシェアリングで解決する。ただし、再雇用、再訓練は国が責任をもってやる。
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| Q: |
小さな政府という理念を、自民党が持ちつづけ、実行できるのか。 |
| A: |
これをしなければ、政権を担うことはできなくなる。
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| Q: |
イギリス・ブレア首相の、第3の道については。 |
| A: |
給与補償までするというなら、それは続かないだろう。
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| Q: |
自民党にこだわる理由は。 |
| A: |
自民党や保守の支持基盤には、すばらしいものがあった。各地域で社会を支える識見と責任感を有するリーダー、それが自民党や保守の支持層だった。自民党はいま、このリーダーたちから見放されようとしている。私は、自民党の中で改革が可能か、いま少し見定めたい。良質な保守層を、構造的にも永続的にも取りこんでいける党づくりが目標だ。
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| Q: |
冷戦終結後の日米安保体制は。 |
| A: |
アジア独自の安全保障体制をつくるのが将来の構想だが、それまでは日・米・中のトライアングルで行くべきだ。日米安保は、そのためにも維持する必要がある。
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| Q: |
ポスト・キャッチアップ政策は何か。 |
| A: |
自由主義陣営にあって経済繁栄を目ざし、欧米に追いつき追い越せというのが、吉田茂と池田勇人が引いた、戦後のわが国の戦略だった。プラザ合意ごろまでは何とかそれでやれた。しかしそれ以降は、日本は独自の文化観、価値観、それに新たなビジョンと国家目標のもとに政治、経済運営をしなければならなかったのだが、それができなかった。「失われた10年」といっていい。
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| Q: |
この1〜2年読んだ本で影響を受けたのは。 |
| A: |
夏目漱石の「草枕」と「三四郎」。 |
「学者・研究者の方々ばかりなので、保守主義、政権交代、連立、派閥などの問題も、現実の政治とは別
の、学問上のテーマとして扱っている」というのが、同行したものの印象でした。
■ 札幌
2番目は、「あすなろ中村会」の集まりです。中村会は、北海道ショッピングセンタービル社長の中村憲正さんが主宰する、経営者の方々の勉強会で、日夜、北海道経済の再生と振興に心血を注いでおられます。また、中村社長は、私の古くからの親しい友人でもあり、私が「加藤紘一がゆく」を始めたおりに、ぜひ北海道にも来てほしい、と声をかけてくれていて、今回お邪魔することになりました。
会場は、札幌プリンスホテル別館3階の広間。この日は大安吉日で、お日柄もよく、ホテルは結婚式でいっぱいです。札幌中のホテルは結婚式の予約で埋まり、主催者の方は、今日の会場確保にご苦労されたと聞きました。したがって、私の会場入りも、花嫁さん、花婿さんの晴れ姿の中をかいくぐってのものとなりました。
華やいだ雰囲気のフロアーを経て、会場に入り、またびっくり。大広間に大観衆です。いす席だけで500、その後ろに百数十人ほどの人が立っての参加です。テレビカメラも4台ほど。記者さんたちも多数控えています。この「加藤紘一がゆく」シリーズでの最高人数です。後で聞いたところによると、ネットを見て駆けつけた人が約150人、会場に来るには来たが、何か入りづらくて帰ってしまった人が20〜30人いたといいます。10人でも20人でも、話を聞いてくれるところにはどこにでも、と始めた行脚ですが、私も政治家、聴衆、有権者、票の多い場所は、望むところです。
さて、今日のテーマは、「現在の政局とこれからの日本」。私は、冒頭「自民党を国民の民意を吸収し反映する政党にしようと、昨年11月、立ち上がった。しかし、準備不足や戦術ミスがあって、挫折してしまい、皆さんの期待に応えられず、申し訳なかった。あの時の私の決意と思いをお話しし、多くの皆さんの意見を聞くべく、いま全国行脚に出ている。準備段階を含めると、こちらで18ヶ所目になる」
「私のあの時の、読み違いの最も大きなことは、国民の政治に対する、そしてこの国の将来に対する、変革の思いの大きさであった。単に森さんに退陣してもらえばいいというのでは収まらないほどに、マグマは膨張していた」と切り出すと共に、
「いまの政局も、後継が誰かというより、どのようにして選ぶかというプロセスが大事。小渕さんの後継を選ぶ時、党内に選挙管理委員会を設けないで、密室で決めたことが、つまずきの始まりであった。今度は候補者が手を挙げ、理念と政策を表明し、堂々と選挙で選ぶべきだ」と、述べました。
「これからの日本」、「21世紀の日本のビジョン」については、
「単純な量的緩和や公共事業でその場をしのぐのではなく、構造改革こそが必要だ。構造改革を通
じて、わが国の未来像を描き、将来不安をなくすことが、最大の景気対策だ。従来の発想にとらわれることなく、考え方を転換させれば、世の中は明るくなり、面
白くもなる。また、政治のやれること、やれないことをはっきりさせ、自立した個人や企業が、伸び伸びと、明るく活動できる社会をつくることが大切で、この国には、科学技術を中心に、潜在能力が十分にある。それを引き出すのが政治の役割だ。公共事業も必要だが、これからは道路や橋ではなく、研究資産を育てることにお金をつぎ込むようにならなければならない。その意味では、北海道発展のキーポイントは、北海道大学にある」
と、話しました。
700余の参加者は、身じろぎ一つせず、じっと私の話に聞き入っています。30分という予定時間を、すでに、かなりオーバーしています。
私は最後に、
「この国の元は何だろう、日本の精神・文化というが、それは何だろう。私は、それは自然を愛し、その恵みに感謝する気持ちと、それを元に築き上げられてきた、コミュニティだと思う。このアイデンティティに誇りと自信を持ち、その生活様式を、さらに高め、豊かにしていこう」
と、結びました。
これだけの人数の中ですから、さすがに手を挙げて質問する「猛者」はいませんでしたが、前もって質問用紙を出した方が2人いました。
| Q: |
国の年金は信用できない。民間の方がいいのでは。 |
| A: |
基礎的な年金は国がやるべきで、その方がいいに決まっている。民間は、つぶれる恐れがあるからだ。しかし、いま公的年金に信用がないのは、666兆円の借金があるからだ。しかしこれも、すぐには返せないが、政府が改革の姿勢を示せば、国民の見る目も変わってくる。
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| Q: |
公共事業に大きく依拠する北海道の問題をどう解決したらいいか。 |
| A: |
必要な公共事業は、今後も続ける。だが、公共事業だけではだめだということを、苦しいことを苦しいと、政治家がまず率直に訴えることが必要。特効薬などはもちろんないが、そのような姿勢があってはじめて、農業者や企業家、住民などと、本当の振興策が話し合えるのだと思う。 |
最後に、主宰された中村氏が、こう締めくくられました。
「北海道経済は、惨憺たるありさまで、右を見ればリストラ、左を見れば倒産。そんな中での、昨年11月の加藤政局、もう自民党はだめだと思った。党を辞めようとも考えていた。しかし今日、加藤さんの話を聞いて、元気が出た。自信が沸いた。これから加藤さんと夢を一緒に実現したい」
私にも大変勇気の出る話です。行脚してよかった、とつくづく思う瞬間でもあります。以下は、同行者の感想。
「加藤さんの考えが十分聞けたのはよかったが、あまりにも大人数のため、質問できにくい雰囲気になってしまっていたのが残念。これからの、この種の集会は、講師が一方的に話し、それを聞くだけで終わるのではなく、質疑応答、そして対話、討論となり、何かをその場で産み出すようになればと思う」
■ 洞爺村
11日、洞爺湖に向かいました。有珠山の噴火で、大変な被害を受け、いまだに噴煙が立ちこめている地域です。事実、洞爺湖畔を通
った時、道端の民家のすぐ後ろから、白い噴煙が上り、一帯に硫黄の臭いを漂わせていました。自然の営みとはいえ、生活者には大変な被害です。
この日の行脚は、洞爺村塾というところのからのお誘いです。この塾は、いわゆる村おこしの勉強会で、「自助、自立、自高」をモットーに、3年ほど前に発足。「地球と自分の未来を考える人々が、自ら学び、お互いに高め合う」ことを、目ざしているといいます。メンバーの毛利拓也さんという、22歳の農業後継者の方が、ネットで申し込まれました。
村は、戸数約750、人口2200余の畑作中心の農村で、ご他聞にもれず、過疎と高齢化、後継者難に悩んでいるようです。また、野菜の値下がりや、噴火による観光客の減少も、村の経済に打撃を与えているといいます。
会場の洞爺村総合センターには、130名以上の人が集まっていました。人口2200のところで、この人数です。テレビカメラも3台、前夜の森首相による事実上の辞意表明を受けての、私への取材陣でしょう。事実、この洞爺村塾での私の政局への発言は、その夜7時のNHKのニュースで、全国に流されました。
私はまず、
「加藤政局後、どうやって国民とのコミュニケーションを取ったらいいかと考え、こうして全国行脚をしている。いまこそ、政治家は、国民一人一人に語りかけることをしなければならず、そのためには、はっきりしたメッセージをもたなければならない。日本はこのままにしておいたら、つぶれてしまう。世界の国からも、尊敬されなくなり、無視されるようになったらおしまいだ。そうならないうちに、大胆な改革、世直しをすべきだ。イタリアの万年政権党のように、つぶれる時はあっという間で、早い」
「景気がいつになってもよくならないのは、老後に対する不安があり、消費より貯蓄におかねを回してしまうからだ。日本経済500兆円のうちの300兆円を占める、個人消費が伸びなければ、経済がよくならないのは当然だ。だが、構造改革を行い、将来ビジョンを示し、いままでの仕組みや考え方を変えていけば、この国は明るく、元気になれる。そのための技術や知恵も備わっている」と、発言しました。
サブタイトルに、「21世紀の過疎と高齢化を考える」とありましたが、やはり参加者の年齢層はかなり高いようです。私は締めくくりに、こう述べました。
「日本文化の伝統と精神とは何であろうか。それは自然に対する感謝と尊敬の気持ちであり、神様とは何であるかといえば、それは自然と人間を仲介してくれるものだと思う。この日本人の生き方に誇りと自信を持つようになろう」
主催者の方から、進行をまかされたので、以後は私と参加者との対話です。
| Q: |
11月の時、黙っていれば、今ごろは総理。残念だ。 |
| A: |
声を上げなければならない時に、声を上げなければ、誰もついてこない。私も政治家だから計算はするが、ただ首相になるというより、何をやるかの方が大切だ。
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| Q: |
デノミについてはどう考えるか。 |
| A: |
やってもいいと思うが、設備その他にお金がかかるので、もう少し景気がよくなってからにしたい。 |
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| Q: |
北海道に新幹線を。 |
| A: |
新幹線建設は容易ではない。フルでやると、キロあたり60億円かかる。ミニだと4億だ。はたして北海道で採算がとれるか。交通
手段は飛行機の方がいいのでは。高速道路やミニコミューターの整備で解決できないだろうか。
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| Q: |
農地法の改正について。 |
| A: |
今回も改正したが、法人化や取得の自由化、他事業展開の許可など、もっと伸び伸びとやれるようにしたい。
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| Q: |
首相公選制について。 |
| A: |
そろそろ検討してもいい時期だ。人気取りに終わると言う批判もあるが、国民の政治意識は成熟してきている。国会議員30名を推薦人にでもすればいい。
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| Q: |
これから、地方分権はどう進めるか。 |
| A: |
町村合併は、あまり大きくなるのは賛成しない。一つの町村の人口規模が一万人程度が適当だと思う。
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| Q: |
いい北海道知事候補を連れてきてほしい。 |
| A: |
それは、北海道の人が決めることだ。 |
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| Q: |
中選挙区制の方がよかったのでは。 |
| A: |
その通り。小選挙区には反対だった。代議士は個性をなくし、党執行部の権限が強くなり、締め付けもきつく、自由な党内議論が阻まれている。
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| Q: |
日本の原点、縄文時代の意識を呼び起こすことが、大事なのでは。
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| A: |
人間にとって最高のぜいたくは、自然の中で暮らすこと。その価値観を知るべきだ。 |
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| Q: |
農業の現状と打開方法について。 |
| A: |
ポイントは、中核農家の支援で、それも補助金ではなく、長期低利の融資だ。米にこだわらず、食料大豆や麺用の小麦をつくっていけるようにすれば、減反しないで済む。そして農業で成功したサクセスストーリーをつくることだ。 |
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| Q: |
まだ自民党にとどまるつもりか。 |
| A: |
党内で、最後の改革をするのが筋だと思っている。私が離党しなければならない状況だとすれば、それはあまりにも悲しい。 |
「過疎の地域に見られがちな、陳情的な発言は少なく、自分たちの力で問題を解決していこうという、意気込みが強く感じられた。国政に対する批判やいらだちを表明されていたが、それも、中央が変わらないのなら、地方から改革ののろしを上げんという、気概さえ感じられた」とは、同行者の感想。
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