日本は今、eジャパン構想やインパクなどでさまざまなIT政策を進めようとしている。確かにITは政治や行政、そして社会を変えるだろう。だが、いくら政治主導で進めようとしても、国民がそれに魅力を感じなければ、社会は進んでいかない。
インパクが始まったころ、若い人たちが私に「インパクって知ってる?」と皮肉っぽく笑いながら言ってきた。彼らはインパクの本質を見抜いている。あるいは、テレビで政治家がこれ見よがしにマウスを持ってアピールしても「クリックの仕方も知らないくせに」と見抜かれてしまう。そういったことがあると、われわれのコミュニケーションツールを、お上に利用されているというマイナスな感情を持たれてしまう。
こうした政治的なPRを行うくらいなら、使い勝手の良いシステムを作っていくことの方が大切だ。コンテンツに関しても、政府が音頭をとっても広まっていかない。光ファイバー網など、安く使いやすいものを整備していくことこそが、政府の役割だと思う。
では、ITやインターネットが政治をどう変えていくのか。eジャパン構想には、お役所仕事の電子化なども含まれている。書類の申請や行政の承認を役所に行かずとも手続きできる。こうした流れは社会に浸透していくだろうし、対面によるお役所仕事もなくなっていくだろう。だが、政治の現場でどう使われるかというのは、いまだ模索状態にあるようだ。
私の場合は、ホームページに二つの役割を持たせている。まず、自分の考えを有権者へメッセージとして伝えること。ホームページへアクセスしてくれる人には、過去の演説や雑誌での対談を公開し、カレントな問題に対しては月に数本ずつ、メッセージを発信している。
ネットに踊らされてはいない
もう一つは私が行っている全国行脚の申込場所としての役割だ。この全国行脚では、恐らくこれまでだれもできなかったことができたと思う。それは、若い無党派の学生や主婦層と集会を持てたこと。通常、政治家が集会をするならば、党組織や講演会組織が動いたり、あるいは自民党に所属する国会議員の応援など、政治的組織を通じて対話することが多かった。
これは民主党にしても同様で、やはり彼らも自分の組織の範囲でしか集会を開けなかった。だが、無党派層はもともと政治的組織に属していないからこそ、無党派なのだ。ホームページならば、そうした政治的な色のついていない組織や個人と集会が持つことができる。全国行脚は2001年の前半に65ヵ所ほど、平均70〜80人を相手に行ったが、実に面白かった。中には「2ちゃんねる」のひろゆきさんと対話したこともあった。
ただ「これは危ないな」という申し込みも数件ほどはあった。私は謝礼なしで自腹で会場まで足を運ぶので、イベントの人集めの格好の標的にもなりかねなかった。未然に防げたが、実際にそうした申し込みもあったようだ。だが、そのリスクを上回るほどに、対話は実りあるものだったと思う。
一方で難しいのは、ホームページに寄せられる意見から、どれだけ民意を吸収できるのかという点だろう。ホームページに寄せられる意見というのは、半年か1年くらい先取りした先鋭的な発言が多い。そうしたシャープな意見と現実の間で、いかにバランスをとっていくかというのは、なかなか難しい問題だ。
ちょうど1年前の加藤政局と言われた時期、私のホームページが話題になったことがあった。「加藤はホームページの意見を参考にし過ぎて、判断を間違えた」とメディアや同僚の政治家に言われたが、それは違う。行動を起こす以前の私のホームページは、極めて地味でアクセス数も少なく「加藤よ、立ち上がれ!」というメールもゼロだった。
加藤政局と言われる事態になり、メディアで話題になってから、急激に注目を集め、1日10万アクセス、メールが3000通くらいにまで膨れ上がったのだ。しかも、加藤政局の真っ只中にあって、メールを見ているヒマは私にはなかった。だから「加藤政局はインターネットが起こした」というのは嘘で、以前からホームページを見てた人は、違うなと感じているはずだ。
もちろん、私に届くメールは自分で確認するし、重要なものはスタッフもチェックを入れてくれる。そうした意見を参考にしながら、現実を直視し、この国をもう一度、元気のある国にしていきたい。
── 了 ──