■昨年11月の我々の主張がコンセンサス(共通認識)になりつつある
【加藤】 どうも皆さん、こんにちは。(拍手)
今日は2月20日でございまして、実は3カ月前の11月20日に私たちはある問題提起をし、行動して、それからちょうど3カ月目の日でございます。あれから3カ月、私がたくさんの方の前でお話し申し上げるのは今日が初めてです。しかし、あの11月20日前後に、我々が川崎二郎さんはじめ同士の皆さんと、この国をどうしようかということを考え、行動を起こしました。それについてはいろいろご批判もありましたが、しかし、この国を何とかしなければならないという思いで行動いたしました、その川崎二郎さんのパーティーで、3カ月目にして一つの感想を申し上げるということは、私にとりまして非常に意味のあることでございます。
3カ月前、私たちは思いました。このまま物事を先送りする政治というのを続けていったならば、この国は壊れてしまう。そして、国際政治のスクリーンの上から消えてなくなるかもしれない。そういう危機感を持ちました。そして具体的には森政権退陣ということを、党員でありながら、しかし、苦しんでも苦しんでもこれは言わなきゃならないという思いで申しました。その時に、我々の声は、自由民主党の中で、残念なことでございましたけれども、多数にはなり切れませんでした。我々は敗れました。しかし、3カ月たって今日、自由民主党の中を見ると、我々が唱えていたことが党の多数になってきたように思います。はっきりと口に出さない方も、また口に出している方もおられるけれども、しかし、ほぼコンセンサスになってきたのではないかなと思っております。
■次期首相選びは自民党の中で総裁選を行うべき
これからどういうプロセスをとるのか、我々は見守っていきたいと思っております。しかし、この国にとりまして、これからある一定の期間、2週間なのか3週間なのか、1カ月なのか2カ月なのか、わかりませんけれども、非常に大事な大事な時になるのではないかなと思っております。
その後、だれが総理大臣になるか。毎日、新聞で書かれております。そして、どういうプロセスで選ばれるべきか。それは毎日のように書かれております。私は、その2つは非常に重要だと思いますし、特にどういった選ばれ方をするかということは、今後の自由民主党の国民に対する目に応えるためにも、国民の目にどう映るかという意味においても、非常に重要なことのように思います。決して、ごく少数の人たちがいわゆる密室の中で決めていいものではありません。堂々と自由民主党の中で公選で行われるべきことだと思っております。
それと同時に、それよりもっともっと重要なことは、この国の今後の政治のために何をなさなければならないかということを、皆がオープンで議論することではないでしょうか。ともすれば、政局の記事というものは、だれが、どうして決まるか、この2点に絞られがちでありますけれども、しかし、今、本当に求められているのは、この国のためにどういった政治をやるかということではないかと思います。
一言で言えば、私は、癒しの政策、人々の心を癒していこう、そして何とか問題点は先送りしながら静かに進んでいこうという政治には、もう限界があるということをしっかりと悟るべき時であり、そして我々政治家が、若干苦しくても、あえて国民に現在の財政の現状とか金融の現状を訴えて、改革に向けて協力してほしいということを訴えていく時ではないかなと思っております。
■国民は厳しい視線と深い考えを持って政治を見つめている
私は今、「加藤紘一がゆく!」というテーマで、全国各地を訪問し、日本はどうあるべきかについて、ビジョンを語り、参加者の皆さんと対話する活動を始めました。そして、時には15人、時には70人の人たちと話し合ったりしております。そうしますと、非常に大きなことに気づくのですけれども、甘い話をしてももう人々はついてきません。そんな話をしに来たのですかというような顔をします。今、日本が置かれている問題点について率直に厳しいことを言い、そしてその後にその解決策について率直に言う時に、人々はついてきてくれるように思います。
会場の雰囲気がはっきりとそこでわかるのですが、それは3年前、5年前と全く違う様相であります。私は、去年の総選挙の直前に、民主党の鳩山代表が課税最低限の引き下げを提言したのを今でも覚えております。この瞬間、私は、ああ、これで民主党がまとまっていったならば、いわゆる見識と責任感に基づいた保守政治の一端を我々は奪い取られるのではないか、保守政治の基盤のある部分を持っていかれるのではないかという恐れを感じました。
しかし、民主党の中で、それはコンセンサスにはならずに、何となく曖昧なものになってしまいました。それと同時に問題なのは、我が党の執行部の方で、課税最低限の引き下げなどということを選挙前に言うべきではないという声があり、国民は理解しないんだ、選挙では不利だという声が広がり、そしてある幹部は国民に、貧しい人たちに負担を求める厳しい政策を言う、そんな非情な民主党に皆さん入れないでくださいと言いました。
私は、国民はじっとその経緯を見ていると思います。666兆円の借金をどうやって返すのか、課税最低限の問題はこのまま済むのだろうかということを、じっと考えていただろうと思います。今、政府が情報をオープンにする政策を3年続けた結果、国民は非常に綿密に先々のことを考えてくれるようになったと思っております。
若い人だとか主婦の方は政治的に無関心層だと言われています。しかし、その人たちは「無党派層」であっても、決して「無関心層」ではないと思っております。そして、激しく、深くものを考えていてくれています。こんなありがたい国民はいない。ある意味では、こういう厳しい視線、そして深い考えを持った国民の中で政治をやるということは、我々政治家としては一つの醍醐味なのではないかなと思います。
■若い世代の政治不信は募っている
今、私は世代間戦争が起きているように思います。若い人たちの間に入って議論をしていきますと、年金の話が出ます。20代の人が年金を論じます。私は昭和14年生まれですが、私たちが20代のときに年金の話をする同級生などは、正直言って変わり者、嫌なやつ、貯金を考えるなんていうのは若者ではないという感覚でおりました。しかし、今はそうではありません。そして、なぜそんなことになっているかというと、多分、20歳以上の成人はたとえ学生でも毎月1万3,300円という国民年金の保険料を払わなきゃならないようになっているからだと思いますし、同時に、老人が多くなって子供が少なくなる今日、自分たちの時代には、今、いくら預けた年金のお金でも、必ずそれが返ってくるという確約はないのだという不安感ではないかなと思っています。いや、そうではない。では、あなたたちはどうするのですかと言うと、民間の年金に入ります、民間の年金商品を買いますと。生保関係の方がいらっしゃったらお許しいただきたいのだが、民間の年金の場合には、必ず利益のために仕組まれる商品であって、一方、国の年金は半分ぐらい税金で払っていくのだから、どう考えても公的年金のほうが得ですよという説明をしても、みんなはピンときません。信じません。
あるときに私は、端的な言葉を若い人から言われて驚きました。いくら年金というのは特別会計で別のところにしまってあるといっても、しかし、結果的には、おやじの時代の景気対策の公共事業費に使われるんでしょう。その借金の穴埋めに使われていくのでしょう。それから、株価を上げるためのPKOに使われるのでしょう。現に使われているじゃないですかというような話をされたときに、私は若い世代の今の政治に対する不信感というのは、ここまで来たのかなと。国民年金に加入して、払わなきゃならならない義務の人の3分の1が今払っていない。その根底にはこのような不信感があって、そして20代、30代が一所懸命貯金をするときに、GNPの6割を占める300兆の個人消費が伸びるわけはないと、私はつくづく感じました。
■国民の年金不安、日本経済の将来不安解消が急務
IMF(国際通貨基金)もOECD(経済協力開発機構)も、そしてG7(先進7カ国蔵相・中央銀行総裁会議)など色々な会合でも、日本経済の最大の問題は金融システムの中に残る不良債権であり、そして個人消費が伸びないことなのだという認識にやっと至ったように思います。公定歩合を下げたりすることよりも、所得減税をすることよりも、結局はそこにあるのだということに、国際的な機関も気づいてくるようになったと思っています。
つまり、我々が今やらなければならないのは財政出動ではないと思います。この国の将来に人々が抱く不安感は、2つあります。年金などを中心とした老後の不安感。そしてこの国の産業は、いずれ全部諸外国から負けてしまうかもしれないという産業構造に対する不安感。政治家は、そこにまともに立ち向かって、国民とともに議論することをすべき時に来ているのではないかと思います。そして、それは時には産業構造を変えます。科学技術を中心に産業構造の突破口を開こうとするときに、それは大学の講座制を変えていかなきゃならん、既得権益、既得権威というものを変えても、若い学者にしっかりと研究費がいくようなシステムをつくらなければなりません。それを考えると、私たちの目の前に立ちふさがった課題は大きいと思います。しかし、その変革をなし遂げていけば、私はこの国は明るい未来があると思っております。
■バイオの分野で日本はまだまだ挽回可能
1つだけ最後に例を言わせていただきます。バイオの世界で我々日本は英米に負けたと言われています。人間のDNA、ヒューマンゲノム、30億塩基対、この分析は英米が中心になってやりました。日本の貢献は1割でした。クリントンとブレアは高らかに去年の6月、我々がやり遂げたと言いました。そして、特にその中心になったのはご承知の、アメリカのセレラ・ジェノミクス社という会社でした。シークエンサーというものらしいのですが、膨大な分析機械をずらっと並べて、日本の手作業みたいな部分をあざ笑うようにどんどんと30億の分析を進めていきました。
では、その機械は誰がつくったか。実は日立製作所でございます。8年前に日立製作所が作って、この機械は商品としてはあまりお金にならないかも知れないと思ったのか、と同時に当時、日米貿易黒字が多過ぎたものですから、何でもかんでも日本がやっちゃいけないという雰囲気もあり、商品化せずにいたところ、それを見たアメリカの技術者が持っていって、セレラ・ジェノミクス社の機械になったわけであります。だから、その機械の上には「Celera Genomics」と書き、その下には今でも小さく「HITACHI」と書いてあります。8年前にその判断を間違えなかったら、ゲノムの世界で我々は世界のトップになっていたはずでございます。しかし、まだ間に合います。その後、どういう病気を見つけるかという点について、我々日本は必死の作業をしてくれる学者をいっぱい抱えております。
■政治が自ら変わらないと国民を説得できない
この国は今、閉塞感に満ちたたそがれっぽい国になっておりますけれども、しかし、必ずいろんな困難を乗り越えて、そして明るい未来を見せてくれる国になると私は思っています。午後3時のたそがれどきの国ではありません。まだ10時、11時の明るい未来を持ち得る国だなと思っております。それは単に物質的な豊かさだけではなくて、知識資産というものに恵まれ、そしてコミュニティを大切にする新しい社会を、私はつくり得るものだと思っております。
ただ、そのためには、皆に変わってくれと言う以上、我々政治が変わらなきゃいけません。我々政治がこのままじゃいけないと思っている部分があったならば、それを口に出して党の中で語り合い、そして他の党の方々とも語り合い、国民とともに語り合って変えていかなきゃなりません。自分自身が変わらずして、各企業にリストラしなさいとか、農業団体に、もっと合併・再編を考えなさいということを言ったときに、説得力があるでしょうか。そんな気持ちで我々は去年からずっと行動してまいりましたし、時には中途半端だったかもしれません。時には実力不足だったかもしれません。しかし、変えればこの国はいい国になるのだという気持ちだけは、しっかりと持っております。
それを一緒になってやっておりますのが、私にとりまして右腕の川崎二郎先生でございます。その感覚は鋭いです。先を見ています。それから、先々、奥の手までいろいろ考えてくれております。なぜ、こんな感覚を持ち得るのか。お父さんが政治家だったからでしょうか。恐らく、しばらくの間民間企業でしっかりとしたサラリーマンをやったという、多分この市民感覚というものが彼の心の中に、政治家になってもずっと残っているからではないかなと、私は思っています。今、それが大事な時だなと思っています。普通の常識を政治に生かすことが大事な時だなと思っています。
背が高くて、若干ぶっきらぼうな川崎二郎さんでございますけれども、本当にこれから日本の政治に重大な突破口を開く仕事をしてくれる人物でございます。どうぞ、皆さんから川崎二郎さんに降る星のごとき愛情をお与えいただきますように、しっかりとこれから、我々は少人数になりましたから、難しい局面が多いのですけれども、でも我々は明るく頑張っていこうと思っております。どうぞ、その我々の同志の中核であります川崎二郎さんに、皆さんのご支援をよろしくよろしくお願い申し上げまして、ご挨拶にさせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
── 了 ──