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加藤紘一「時局報告」
第2回紘友会セミナー
2005年6月22日
司会:衆議院議員加藤紘一より「時局報告」をさせていただきます。

郵政改革のあるべき姿とは

 さて、郵政特別委員会ですが、この郵政改革って一体何だろう、よくわからないのだけれど、選挙区に帰ると多くの有権者から尋ねられます。それで私は分からないわけです。なぜかと言うと、書いている新聞記者の人も何を書いているのかよく分からなくて書いているわけですし我々国会議員も今度の改革で何が変わるのかと言ったら正直分からない。私は党の幹事長、政調会長をやりながらなおかつ戻ってきてこの郵政改革の委員会も全部は出ていませんが半分くらいは聞いているわけです。合計30回やったとかある時には朝の3時までやったというときもあるのですが、その朝3時までの時も私は出ていました。

 色々な論議があって国会でも公聴会が行われてきたけれども、その中でオキナさんという女性で日本銀行出身の日銀研究員の人ですけれども彼女の言った「この変革をやっても郵便貯金には暗黙の政府保証が続きます。」という台詞が一番正しいと思います。

 政府関係金融機関であるというイメージはいつまでも続くと思いますし、ということはいい商売が出来るということであって、もちろん余計な保険機構にも入らなければならないし固定資産税も納めなければならないけれども、しかしそういう親方日の丸保証付きの金融機関がなおかつ今度は民営化の下に自由な仕事が出来る。今度は融資も出来るし自分に融資審査機関がなければ地元の信用金庫とタイアップして融資業務をそちらに丸々お願いするというのも可能ですし、そうなれば巨大な金融機関になるのだろうと思います。ですから私はかなり危ない話だと思います。

金融部門の民営化はやるべき

 私は郵政民営化に賛成です。なぜかと言うと今日本では、ご専門の方も居るかと思いますが、約500兆円が年金・簡保・郵貯で運用されています。大体民間金融機関と同じ金額になっているはずです。片方は膨大な審査と担保をとり優秀な銀行マンが丁寧にやっても不良債権が発生するわけで、もう一方の500兆円はある意味2〜30万の人でやっているわけです。それでなおかつ貸し代の方は一括まとめて財投運用ですから数千人も絡んでいないかもしれません。ですから当然のことながら雑に貸しておりますしなおかつ政策金融であるという名目の下にこれは甘くていいのだ、また甘くするほうがいいのだということでやっているわけですから巨大な不良債権が生じているわけです。それは利子補給という形で出ていますし不良債権も処理しないで現状のままでいるという形になっているわけですから、私は民営化する事が正しいと思います。そして金融業と保険業というのは民間できちんと出来ているわけですから「民間で出来るものは民間に」という考えは正しいと思います。

民にできないことは官で

 しかし同時に郵便局がやっているのは郵便という50円で山奥まで葉書を配る、そしてその地域のおばあちゃんが自分の老後の為のヘソクリを130万持っていて、その貯金通帳をもう亡くなったおじいちゃんにも当然息子夫婦にも見せなかったしもちろん嫁になんか死んでも見せないなどと思っているヘソクリ貯金通帳の決済相談相手のような地域貢献事業をやっているわけですから、このようなものをペイするわけがない。
この「民間に出来るものは民間に」という話と「民間に出来ないものもあってこれは官業でやらなければならない」という話をいっしょくたんに民営化してしまおうと言ったところが間違いだったと思うのです。ほんのちょっとした初動ミスが論議を実にめちゃくちゃにしていると、自民党の議員といえども国会議員がここまで綿密に勉強して論争してエネルギーを使ってもったいないなと思うほどです。

 理論的にはお互いに合意に達することが出来るのになぜそうならないかと言うと、ここが問題なのですが、正直言って首相は財務省の影響を受けすぎているのでないかと思います。つまり税金をいれるということに財務省はどんなことがあっても抵抗します。当たり前ですがそれが任務ですから。しかし全国に26,000の郵便局があって地域に今2,200位の市町村になってそれで本当に過疎地を持つ町村は600前後になって、それで各自治体に2ヶ所位ずつ山奥の面倒を見ると言ってもいくらみたって5,000です。竹中さんが説明に来た時に 「そこに200万円の補助金を差し上げてそして細やかに地域のおばあちゃんたちの面倒を見て金融業をやって下さい、ということを言えばいくらで済むと思っているのですか。」 と聞いたら、
「それは1兆円近いのではないですか。」
と言うので、
「違うでしょ、足し算してみなさい。」
と言いました。
500ヶ所×200万というのは100億です。その程度の話なのです。一方郵貯と生保両方合わせて350兆円くらいの金融業をやれば0.5%差をとってもそれは2兆円近いお金になって税金だって数千億入るはずです。入らないような経営をされたらつぶれるわけですから、100億200億というのは同位のお金ではないのです。いつまでもやらなければいけないわけでもない。つまりなぜ私がこういうことを言うかというと、役所はそれぞれの立場で頑張る、団体もそれぞれ頑張る、しかしこの社会の金融と地域の中のおばあちゃんの面倒を見るということを総合的にデザインする一人のアドバイザーを置いておけば大体話は見えていいところに行ける、そしてそれに小泉さんの見事なパフォーマンスの力、そして言葉の力を使ったらもっと良い日本の政治、政策論になりもっと良い社会が作られるのにと思っております。何をやっているかわからないから国民の興味がほとんどない。このようなテーマで解散をしてはいけないと私は思います。

外交について

 さて外交面ですけれども、かなり袋小路に入ってきました。
靖国問題ですが、私は靖国神社分祀かもう一つの慰霊施設を作る、このどちらかしかないと思っております。
私はここで日本の気持ちをぶちあけるべきだと、日本の心をしっかりと持つということが正しいと思います。靖国神社や鹿児島の特攻隊出撃基地の中に残されている若者の遺書を見ると誰だって涙します。「お父さん、お母さん、明日出て行きます。しかしお国の為私は死ぬのです。お父さん、お母さんを大切にして下さい。」というような手紙を22・3歳の青年が書いていたのです。しかし同時にこれをこちら側で言うと、「「お父さんはゲリラではない。」と日本軍に言いつづけたのに「ゲリラを支援している。」と家族の前で言われたのですよ。その思いが口々に伝えられ、60年で消えるものではありません。」と中国の老婦人の台詞が帰ってくるのではないかと思います。ですからそこにどうにか終着点を見出せなければなりません。
その時に、山崎さんが言っていたけれども、やられた方はやり返す、忘れたくない。しかし加害者は忘れたい。それがはっきりしているのは、我々が広島、長崎の原爆慰霊祭を総理出席の下で60年経っても毎年やっているということです。しかし中国の方がそれを言い出すと、60年経っているのにしつこいじゃないか、と自分たちを客観的に見られないところがあるのです。それを、国民感情というのはそういうものだと冷静に見るのが政治家や総理大臣の辛い任務ではないかと思います。
私は先日、韓国の大使と国会議員与野党2〜30人との会合に参加しまして、そこで韓国大使に質問をしました。
「日本人は最近韓国が対日強硬になったのを困ってなと見ています。それはなぜか。例えばヨン様、韓流ブームでうちの家内も含めて夜中12時までBS放送を見ている日本の女性を、日本の男として若干心穏やかではないけれども日韓友好のために良いことではないか、と寛容な気持ちで見ています。そうすると韓国の方もそれを喜んでくれていると思っていました。それでやっと心打ち解けたと思っていた矢先に、竹島問題でデモをやる、姉妹都市提携を中断する、韓国は一体何なのですと日本人は思いますよ。心許した途端殴ってくるのですね、と日本人は思いますよ。」
と言いました。すると韓国大使が
「冗談じゃありません。我々も同じように思っています。日本でも韓流ブームは韓国人にとって嬉しかったことです。特に日本の女性が韓国の男性を認めてくれたということに大変喜びました。それなのに、そう思っていたら竹島決議などをやったのは日本の方ではないですか。」
と言いました。時系列的に見ると韓国側の主張のほうが正しいのです。今まで絶対に島根県議会はこの決議をしてこなかった。全部政府が止めていたのです。それをなぜかどこかで間違ってしまって島根県議会は竹島決議をしてしまい、韓国は新たな挑戦として受け止めたのです。この問題をずっと考えている私でさえ間違えていた位であって、やはり私は日中日韓の政治家はお互いにナショナリズムに90%は乗ってもいいけれども、残り10%は相手の立場からものを見る冷静さを持っていないといけない辛い商売だと思います。

国連常任理事国入りについて

去年9月、私はアメリカの上院に行ってアメリカの上院でも最も外交問題で権力がある人に会いました。
「国連の代表権に入れたくないとみんな思っていますよ。すでにある5ヶ国が入れたいと思うわけがないでしょう。特に5カ国を決めた時の国際的地位に比べて今の地位は落ちていますから。」
と言っていましたが、それは多分ロシアを示しているのだと思います。私はアメリカも入れたがっていないと思いました。それはそうです。日本も常にアメリカと一緒に投票しますから、何て言ってもアメリカはそれを信じるわけがないし、30年も50年も日本がアメリカの言うとおりに投票するなんて考えるとしたらそれは外交家ではありません。中国はもちろんです。我々の選挙も隣近所の人に「加藤さんってやっぱり国会議員としてはだめですよ。」と言われたら一斉に選挙はしらけてきて落選につながります。どんなことがあっても、親戚とか隣近所の人が一生懸命になってくれないような選挙運動は必ず負けます。中国と韓国が日本を反対するためにキャンペーンをやっているわけですし、そして頼りのアメリカは分断政策に出てきているわけですから、国連の代表権は無理だろうと思います。

靖国参拝問題

 私は今回中国に行って
「やっぱりあなたたちの国が日本の安保理参加のための根回しキャンペーンを世界中回ってやってくれるようなそんな日中関係にするようにこれから頑張りますから。」
と言いましたが、
「我々日中関係者はものすごく立場がなくなって無力です。」
と意気消沈しておりました。そして今度中国に行って新たなメッセージをもらってきたわけではないですけれども、いくつかの判断材料をもらってきたと思います。
その一つに、デモが始まって3週目にこれでは中国も国内を治められなくなるし経済もおかしくなるということで、中国では初めてのことのようですが、人民大会堂という大きいところに6,000人を集めたということがあります。各大学のサークルの長とかデモをやりそうなグループのトップとか全て集めて、外務大臣はじめ歴代の駐日大使など一斉にそこで日中関係はいかに大切か、中国の経済はどれだけ日本に依存しているかということを延々説得し、終わったらそのメンバーで各省ごと説得して歩いたのです。そうしないとまとめられない国になりました、と言っていました。
それはそうです。テレビをつければ40チャンネルもあります。たまたま私は中国語が分かるので内容を聞いていましたら、非常に格好の良いかなりクールな国際性のあるコメントをするようになっていたわけです。だから簡単には治まらないと思います。そしてそのような努力をしたということを中国は外部に言わないのです。ここは社会主義の官僚国家が残っているわけで、内部活動として総括していますからそれをメディアに見せていない。でもこれだけ努力をして治めたのにという中国側の思いがある中で日本側は「やる気になったらすぐ治まったじゃないか。」という発言をするものですから、かなり危ないと思っております。

 靖国参拝問題というものは、結局サンフランシスコ条約を尊重するかどうか、やはり国家として一番守らなければならないのは国際条約であって、その国際条約の中でも一番守らなければならないのは、嫌なことですけれども、戦争が終わった後の講和条約ではないか、というのが日中関係のポイントではないかと思います。いよいよ色々なところで破談を来たし始めておりますので、こういうときに、何がインディペンデントな国家の主張であるか、そこを国内問題も国際問題もしっかりわきまえられるように日々研鑚して参りたいと思います。どうも今日は有難うございました。