加藤紘一倶楽部 KAKKO
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特別対談「識者と語る、この国のかたち」  
第1回目の対談相手は、渡部恒三・民主党国会対策委員長
※ 平成18年4月3日収録/平成18年4月5日掲載
タイトル
動画
◆ 民主党への不安と期待  56k  128k 
◆ 格差社会こそ最大の政治問題  56k  128k 
◆ 地方を知らない改革が、
  地方を苦しめている
 56k  128k 
◆ 日本を再生させる教育は地方にこそある  56k  128k 
◆ 今、自民党の空気を直すべきとき  56k  128k 
◆ 地方が良くなれば、日本が良くなる  56k  128k 
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民主党への不安と期待

加藤 私のホームページにカッコウ・クラブというのを作ったのですが、隔月で一人くらいずつと対談をしたいと思っているんです。スタッフが第一回目はぜひ渡部先生にお願いしたいというので、同じ東北というのでお時間をいただき、ありがとうございました。

渡部 それは光栄です。

加藤 ところで、今日これを録画しているのは4月3日なのですが、7日は……

渡部 8日ですね。

加藤 8日ですか。いよいよ民主党の党首選挙ですが、もう菅さんか小沢さんだって言ってましたね。

渡部 もうふたりに絞られた。いずれかです。

加藤 いずれかですか。仮に小沢さんがなったとして、なんとなく民主党が“第二自民党”になったみたいじゃないかなって。

渡部 ああ……。面白いのはね、今、民主党内で小沢君を一番積極的に支持してるのが、横路君をはじめ、旧社会党の皆さんが、これ正面きって小沢君の応援をしてます。

加藤 面白いですねぇ。

渡部 前原が嫌だってことで共通しちゃったんだなぁ(笑)。

加藤 いや、私はその、渡部先生だって自民党から行ったんだし、羽田さんだとか岡田さんだとかいろいろいて、なんか第二自民党みたいになっちゃって、本来自民党で社長間違いなしと言われた小沢さんが、第二子会社みたいなところで社長になるのかなと。

渡部 そうそう、その通りだね。

加藤 民間の会社でよくあるみたいな話になったなと思っているんですけど、違うんですか? 支持しているのは横路さんだとか、あっちのほう?

渡部 ああ、旧社会党が一番熱心。それはね、人間というのはね、憎らしい奴ができると考えがまったく違うものでも「あの野郎憎い」ってことになると、いっしょになっちゃうんだなぁ。面白いもんだねぇ。

加藤 敵の敵はわが友人……。

渡部 ただ、“7奉行”とか言われたなかでね、まだ(存命中で)総理大臣になれてないのが、僕と小沢君だけなんだ(笑)。

加藤 当時7奉行というと?

渡部 小渕、橋本、羽田、奥田、梶山……

加藤 う〜ん、そうか、そうか。今の民主党は、そういうふたりでないと、国会対策も、党首のほうもダメだというのは、ちょっと寂しくないですか。

渡部 いやあ、結構人材はいるんですがね。当選4回以下なんだなぁ。僕が民主党の将来に希望を失ってないのはね、失礼ですが、当選4回以下の者を比べてもらうと、決して自民党に劣りません。

加藤 そうですか。

渡部 たまたま今回、あの永田問題で前原君、失敗しちゃったんで、なんか若いものだけではダメだと。やっぱり経験豊富なものということで、私や小沢君が担ぎ出されちゃったんだなぁ。

加藤 当選5回以上は……

渡部 いいのがおりますよ!

加藤 当選4回以下はね。

渡部 ええ。

加藤 というと、当選5回以上は自民党にいいのがいる(笑)。

渡部 まあ、そうなんだねぇ(笑)。
だから、あの小泉君が総理になって演説したとき、僕は議長席に着いてね、つくづく考えさせられたのは、あの民主党の若い奴らが、小泉君が「改革」って言うと喜んで拍手して、自民党の当選5回以上の後ろの席では拍手する奴らは誰もいないんだよ。

加藤 ああ、ありました、ありました。渡部先生、よく見てますね。あの場面は印象的でね。

渡部 やっぱり当選5回以上では、自民党のほうがしっかりした考え持ってるのがいるんだなって思ったね。

加藤 そうですねぇ。まあ、今度のメールの事件っていうのは……

渡部 あまりにもお粗末でね、話にもなりません。

加藤 うん。まあ、それからあの永田さんという、大蔵省出身の優秀な議員なんだろうけれども、党内的にこちらから見ていて、どうしようもなかったんじゃないかなぁって気がするなぁ。

渡部 もう私はね、この事件が起こるまで(永田代議士の)名前も顔も知らなかったの。で、国会便覧を見たら、加藤先生に失礼になるかもしれないけど、東京大学で大蔵省っていうのは、ああ、これなら大丈夫じゃないかなと思ったら、これが一番つまらなかった。

加藤 それはどういう意味ですか? 東京大学はつまらない?

渡部 私らはなんとなくね、東京大学出て大蔵省になったら、そんな大きな過ちは起こさない、心配ないという、私の古い頭だったな。

加藤 う〜ん……。まあ、大蔵省にもピンからキリまでいますからね(笑)。まあ、いずれにせよ、私は今度の永田事件は……

渡部 ああ、外務省はいいんだ!

加藤 外務省はいいんです。外務省は(笑)

渡部 みんないるいる。民主党にもいるいる。

加藤 達増なんかいいですよ。うん。だから、そのへんはよく認識していただきまして(笑)。
 
格差社会こそ最大の政治問題

加藤 それはそれとして、今、格差問題というのがあって。

渡部 うん、それが最大の政治問題だ。

加藤 本当はそれを論議すべきで、ホリエモンの事件がきっかけで、みんな言いたいと思っていた格差問題をしゃべるようになって、国会でもいい緊張が走って、いいなぁって思ってたら……

渡部 それが永田にすっかり潰されちゃった。

加藤 この1ヵ月半で。

渡部 まあ、小泉君も運がいいと思うのは、あの永田がいなかったらね、今頃もう小泉政治は日本を滅ぼすっていうことで、国民的に悪影響ができてたよ。

加藤 まあ、自民党の私としてはそうだとは言いませんけども……

渡部 加藤さんと僕と、同じ気持ちはね、僕は福島県を愛してるし、加藤先生はやっぱり故郷山形県を愛していると思う。小泉君になって、特徴は地方が悪くなった。完全に小泉君の政治は地方切り捨て。このままいったら、故郷はなくなります。 東京があるから地方があるんじゃありません。地方があるから東京があるんです。それをぜんぜん小泉君は知らない。そして、あの六本木ヒルズで何やってるんだかわからないようなのが、金儲けして。 だったら東京がよくなってるかって言ったらね、加藤先生、この前僕は北区と足立区に行って驚いた。小泉内閣だったこの5年間、今度子どもが小学校に入るという、また小学校に通わせているという親たちがね、教科書買えないんだって。学用品も買ってあげられないんだって。貧富の差が大きくなった。それから地域の格差が大きくなった。これは加藤先生、自民党を変えてください。自民党を変えなければ、私たちといっしょにやりましょう。

加藤 いや、確かにその問題は大きいと思いますね。それからまた、都会でもかなり格差が目立ってきたことを議論したい私としては、いい政治状況といいますかね。国会もかなり実りのある状況になるなって思っていた途端に、まあ、1ヶ月半ふいにしましたけど。 今日が3日ですから、どなたがお宅の党首になるのかわかりませんが、8日の日からは、本当にいい国会にしなきゃいけないと……

渡部 はい、はい!
 
地方を知らない改革が、地方を苦しめている

加藤 渡部先生が、地方が苦しくなってきたと言いましたけど、私も同感です。で、私も国会に三十何年いますけれども、太平さんの時代からずっと見てきて、「どうしてこの偉大な政治家がこんな判断ミスをするんだろう? 我々と違ったことをやるんだろう?」と思うと、選挙区を見ればいいと。

渡部 その通りだね。地方なんか知らないよ、小泉君。農村も山も知らない。

加藤 だから、あるときに中央の経済が少し良くなった。地方も良くなりましたって総理大臣が言ったものだから、ちょっと違うなぁと。

渡部 とんでもない間違いだ。彼らは東京と横須賀と六本木ヒルズしか知らないんだ。だから景気が良くなったなんて言ってられるんだ。深刻ですよ、僕らほうの中小企業者なんかは。明日潰れるか、なんていうのがみんなですよ。

加藤 ところが、それが自民党の中でもなかなか議論ができない。というのは、地方の声を代弁すると称して改革の足を引っ張るんじゃないか、というふうに思われちゃいかんというので、あまりしゃべらんのですけどね。

渡部 「改革」という言葉に踊らされたんですけど、小泉君ていうのは言葉の名人でね、「規制緩和」「官から民へ」。これで人気を取ってるわけですけれど、こんなことは5+5=10の話なんですよ。むしろ政治がこれからやらなきゃなんないのは、これはどうしても官でなけりゃならないのか。こんなことは官ではなくても民にやらせていいんじゃないかということ。規制緩和だって、いくらそう言ったって交通規則をなくすわけにはいかないんですから、これはやっぱり厳しい規制が必要だと。しかしもう田んぼがこれだけ余って減反だって言っているときに、田んぼを宅地に使うのに何年も、役所の何人もの判子が必要だっていうのは、やめていいんですよね。こんなのは、規制をやめて。それが規制緩和ということで、官から民へとか、規制緩和ってのは決まりきったことなんですよ。

加藤 そうですね。この間、このホームページでも一回しゃべったんだけど、面白い記事が毎日新聞に載ってましてね。それは先生の選挙区の隣なんだけど、栃木県鬼怒川温泉の奥48キロ山奥まで入って行くと、奥鬼怒川温泉郷があるらしいですね。福島県に近くなるのかな。

渡部 そう、私の生まれたところ、旧田島町っていうんですが、隣村の裏ぐらいですか。川治温泉の隣ですから。

加藤 そうですか。そこまで48キロあって、そこに東武バスが運行してるんだそうです。

渡部 その通りです。

加藤 ところが、とても客が少ないんで、東武バスはやめちゃったと。村人は困っちゃって、沿線の人々は、病院にも行けないと。村議会で相談して、村営バスをやることにした。1日5往復、48キロだから片道2100円。ちょっと高いなと思ったけど、それなりにみんな使っていた。そしたらそこに、地元の運送会社が土・日・祝日だけ運行するバスを始めたっていうんですよ。それも500円安い1600円。それから、出発は村営バスと同じ場所から、村営バスの時刻表の5分前に出る。そうすると、客がみんなそっちに行ったと。

渡部 ええ、そういうことありますよ。

加藤 そっちは儲かるけど、村営バスは困っちゃった。「ちょっとおかしいんじゃないの」とみんなで言いに行ったら、「これは競争によって500円安くなったんだから、利用者は喜んでいます。それにこういう規制緩和で自由にやるのが、現在の内閣の方針です」って社長が言うもんだから、そんなものかなぁってみんなで浮かぬ顔をして戻って来たっていうんですけどね。

渡部 公益性のあるものは、産業として保護しなくちゃならないんですよ。交通機関だってそれはありますよね。山形交通だっていろいろ抱えていると思いますが、今の小泉君の保護政策は一切やめて規制緩和だってことでね、恵まれない地域の人が、交通の問題もそうです、いろんな面でどんなに不自由になっているか。

加藤 それはありますね。だから、この話を政府の規制緩和委員会の主要メンバーになっている、ある経済人の方に話したら、「やっぱりそういうときには山から下りてきてほしい」と。ここがポイントなんですよね。

渡部 うん、故郷がなくなっちゃう。

加藤 それは確かにジワリジワリと降りてくるようにはなるんだろうけれども、山から下りてきてほしいってことを単純に言っていいのかなぁ……

渡部 これは大変な間違いでね、60年前、日本があの太平洋戦争に敗れてここまで来れたのは、国敗れて山河ありでね。あの戦争中でも地方の人たちが一生懸命植林をして、山を緑を守ってきたから今日の日本はあるんですよ。

加藤 そうですね。

渡部 地方に住む人がいなくなったら、日本は潰れてしまいますよ。

加藤 そう思いますね。で、私はこの話を、財界人だとか主要な経済界で活躍している若手エリートサラリーマンとか、何百人という会でしゃべったりして、手をあげて聞いてるんです。山から下りて来いっていうのが本当か、規制をちょっと戻すのか。それとも地域のみんなの意識で、社長にコノヤロウ、お前勘違いしてるんじゃないかと怒鳴りつけるのか。この3つしかないように思うがって言ったら、ほとんどの人が2番か3番でね、山から下りて来いという合理的なことを言う人は、財界人でも、エリートサラリーマンでもほとんどゼロなんですよね。ところが、規制緩和委員会の人たちは、「加藤さん、一番目の山から下りて来いという人が多かったでしょう」と言う。「いや、ほとんどゼロだよ」と言ったら、おかしいなっていうふうに言ってましたけど。 私はここに、今の小泉さんや竹中さんの路線の勘違いがあるんじゃないかなって気がしてしょうがないですね。

渡部 もう小泉・竹中路線で行ったらね、故郷はなくなっちゃう。日本はアメリカの州のひとつでしかなくなっちゃう。
 
日本を再生させる教育は地方にこそある

加藤 ところで、今日は4月3日ですが、ここしばらく大変な話題になったのが、小学校の子どもを15階から投げ落とした。その後清掃作業のおばさんをやろうとして失敗、逃げた。今日の朝刊によると、3人目を狙っていた。ところが、この人が41、2歳の青年なんだけど、子どもが3人いて。それで、「ああ、あの男は昔から凶暴な男だったんだよね」というんだったら話は簡単なんですよ。ところが、子どもに優しくて、見事にまじめなサラリーマンをやってたのが、突然あんなことになると。はて、これはちょっとよっぽど考えなくちゃいかんなって悩んでいる。悩んだってしょうがないんだけど、考え込んでいる。

渡部 この5年間、理由なき犯罪、まあ人殺しは悪いに決まってるけど、昔はそれに理由があったのね。最近は理由なき犯罪。それにかつては考えられなかった親が子を殺したり、子が親を殺したりね、本当にこれは教育の問題、真剣に取り組まなきゃなりませんよ。

加藤 そうですね。

渡部 心の教育。

加藤 そうですね。ただ、“心の教育”って言ったときに、じゃあ誰が、何を教科書に、どこで教えるかというと、具体的な話なんだけれども、まずひとつは、親が家で教える。

渡部 ああ、そうそう。家庭教育。

加藤 家庭教育ですね。ところが、最近は核家族なものだから、若い親が親自身教育が必要なくらい、しっかりしていないと。

渡部 もう1回家族ということを考えなくちゃなりません。

加藤 ということは、大きい家族ですね。

渡部 ええ。やっぱりおじいちゃん、おばあちゃんがぜんぜんいないところで育った子は違う。おじぎの仕方も何も。

加藤 違う。

渡部 はい。

加藤 先生の選挙区なんか、親子三代。

渡部 多いねぇ。地方がなくなるってことは、家族、家庭もなくなるってことですよ。

加藤 そういうことですね。

渡部 おじいちゃん、おばあちゃんが孫の手を引いて歩くなんて姿なんかもなくなるんですよ、この国から。

加藤 うん。山形県は親子三代住んでいるという率が、全国で一番高いんですよ。

渡部 ああ、山形はすばらしい。

加藤 ま、いろいろあるんですけどね、嫁姑とか。

渡部 それでも最近少ない。姑の嫁いびりは民主党くらいじゃないか(笑)。僕の会津なんてね、むしろ姑の嫁いびりじゃなくて、嫁の姑いびりくらいに変わってるから。

加藤 だいぶそういうのありますね。選挙区でわーっと選車が行くでしょ。するとまだ農村ではおじいちゃん、おばあちゃんから働き盛りの孫とか、三代か四代が出てくる。昔は、一番前に出てくるのはおばあちゃん、おじいちゃんだったんですけどね、最近は若い嫁さんなんかが前に出てきてね(笑)。うっかり若いお嫁さんなんかに先に握手したりなんかすると、あとでしこるんですよね(笑)。

渡部 変わってきた。生活、風習が変わってきた。だだね、僕が自分で言うのもおかしいけど、僕が世の中に出てきて、一番良かったことは、お年寄りに元気が出てきたんですよ。

加藤 ああ。

渡部 渡部恒三ってテレビに出るたびに73歳って出るでしょう。そういう人が「やっぱりオレもまだまだだ〜」って。もう全国のおじいちゃん、おばあちゃんに元気つけて。僕がそのときにテレビでね「もう、これから73歳、渡部恒三って言ったらテレビ出ませんよって。あの美しく若い森光子さんより12歳若い渡部恒三って紹介しなさい」って言ったら、みんな元気出てます。

加藤 そうですよね、うん。

渡部 おばあちゃん、みんな森光子さんに負けないようにって……

加藤 スクワット運動始めたりね(笑)。

渡部 ああ、由美かおるの運動ね。

加藤 由美かおるさんて幾つなのかな?

渡部 55歳。

加藤 55歳! 若いなぁ。

渡部 森光子さんが85歳。

加藤 あの屈伸運動を朝75回、夕方75回。あれは我々もそう簡単じゃないですよ。

渡部 ああ、あれは大変なもの。僕はね、21年前、厚生大臣のとき、由美かおるさんに健康政策審議委員という大臣の諮問機関の審議委員をお願いしたんです。それ以来のお付き合いで。

加藤 そうですか。渡部先生が活躍してくれたんで、自民党の中もですね、経験豊かな人間が頑張らなくちゃっていうことになってまして、我々当選回数がちょっと上……というか、僕なんかかなり上なんだけれども……

渡部 やっぱり「ポスト小泉は加藤でなけりゃならない」っていう空気になってるね、今。

加藤 いや、そんなことはないですけど(笑)……
 
今、自民党の空気を直すべきとき

渡部 これは本気の話ね、今までも本気だけれども、今私心配しているのは、自民党の雰囲気がね、僕らがいるころは、まあ派閥で言うと悪いけれど、大平、田中派なんて言われた頃は、自民党の外交政策や安全保障についての考えはハト派が大勢で、青嵐会の人たちは一部の考えの人たちだったでしょ。それが、最近の自民党をみると、ハト派の考えが一部の人になって、昔の青嵐会が自民党になったみたいで、これは非常に心配しているね。私はこの自民党の空気を直すのは、加藤先生しかいないと思っているんです。

加藤 いや、本当にそこが、いわゆる中国なんかとは喧嘩しちゃえ、みたいな話が多くなってきたのは心配ですね。つらつら考えてみると、渡部先生が言ったように、経世会、田中派と我々というのは、ハト派集団であった。

渡部 やっぱりあの時の政治は良かったと思いますよ、今考えて。

加藤 ねえ。

渡部 だから、これだけの日本になったんだ。

加藤 それからもうひとつは、国際関係を丁寧に真剣に考えていたというところはありましたね。

渡部 ええ。やっぱりあの、田中総理、大平外務大臣で日中の国交回復を一挙にやり遂げ、青嵐会から文句言われたけどね、私はあの時代の自民党員だったことに、今でも誇りを持っているな。

加藤 秋の総裁選挙をめぐって、二つのテーマがあると思うんですが、ひとつは中国に対する外交をはじめとして、アジア外交をどうするか。それからもうひとつは、さっきやった競争だけさせて、勝者敗者を作って……

渡部 勝ち組、負け組。

加藤 勝ち組、負け組。格差があってもいいかと。僕は小泉首相が本会議で、「格差があってなぜ悪い」と。

渡部 あれ、とんでもない話だ。

加藤 ねぇ、あれは僕は……あれを言っちゃお仕舞よと。

渡部 もう政治はいらないってことだ。

加藤 いらないってことです。

渡部 僕はね、通産大臣のとき、江沢民さんと一時間話してね、胸を張ったことがあるんです。というのは、わが日本は、戦後60年資本主義経済で自由主義の政治をやってきて、結果としては貧しい人も少なくなった。特別のお金持ちもほとんどいなくなった。ほとんどの人が中産階層といわれるようになりました。もし社会主義の理念が、経済的平等であったとすれば、日本はもっともすばらしい社会主義政策をやった、褒めてくださいと言ったら、江沢民さん褒めてくれましたよ。

加藤 褒めてましたか。

渡部 ええ。それから僕がそのとき、今のブッシュのお父さんね、ブッシュ大統領に威張ったのはね、「あんた、先進国だなんて言ってるけど、あんたたちの社会保障制度はどうなってるんだ」と。「ぜんぜん健康保険制度なんてないじゃないか。わが日本は、どんなにお金がない人でも、重い病気になれば立派な病院で治せますよ。いつでもお医者さんにお金がなくてもかかれますよ」と自慢した。ところが、小泉内閣になってから変わってきた。その表れが、あれですよ、我々が自民党にいた当時は、保険と言えば生命保険だった。ところが今、朝から晩まで「アリコジャパ〜ン!」って、病気になったら1万円ずつもらえますよとか、ああいう広告ばっかりでしょう。あれは国民が、残念ながらもうこの国の社会保障、健康保険や年金を信用できなくなったってことの表れですよ。

加藤 うん、本当はね、国の健康保険でも年金でも、かなり税金をつぎ込んで運営してるから、民間のやつよりはずっといいはずなんですけどね。まあ、そこに信頼が置けなくなったのは、かなり問題だなと思いますね。
 
地方が良くなれば、日本が良くなる

加藤 ところで、ちょっとテーマを変えますけれども、時事放談というテレビにいっしょに出ましたね。あのとき渡部先生がおっしゃったのが面白くてね。「いや、世の中政治のスタイル、政治のあり方も変わったと。昔は自分が福島の選挙区に帰って後援会長に会う。するとお孫さんを連れてくる。そのお孫さんに後援会長は、おじいちゃんが応援しているこの渡部先生は、大臣を何回もやった偉い人だというと、孫はほう!と思ったものだ。ところが最近は違う。テレビによーく出る偉い人だというと、孫がほう、と言ってうなずく」と。

渡部 うん、そうそう(笑)。まったくおっしゃるとおり。今、偉い人はテレビに出る人。これはオレもね、こんなことになるとは思わなかった。ところがこの1ヶ月ほどテレビに出ておったらね、おととい、千鳥ヶ淵で花見をしようと思ったら、まあ花見どころじゃないですよ。ブワーッと人が大勢集まって、なんか王監督になったみたいだった(笑)。

加藤 いい気分だったでしょう(笑)。だからね、渡部さんは期せずして頼まれてこんなことになったんだけど、でも普通選挙区に一生懸命帰るよりも、5分でいいから政治がらみのテレビに出たいという政治家が多くなっちゃったね。いいことなんですかね。

渡部 これも好ましくないのはね、正論を言ってテレビに出るならいいけれど、あんまり正論を言ったのでは出られないんですよ。やっぱり変わったことを言わないと。そうすると、政治の信頼がますます落ちていくんです。つまらないのばっかり出てきて。まじめな政策論議なんかでは出してもらえない。

加藤 そうですねぇ。なんか、解決策ってあるんですかね? アメリカでも、20年、30年前、テレビ政治っていうものがいいのかと議論してたけど、特に解決策なく今日まで来ていると思うんですがね。

渡部 やっぱり、教育から出発しなくちゃなんないんじゃないの。教育から。

加藤 私は、最近人の意見を決めるのは何なんだと。昔は家の中でおやじの意見もあったし、地域社会で隣近所のおやじさんたちの意見もあった。会社に行けば、上司がいろいろ文句をつける。あと本で読んだ話や、新聞で読んだものと混ぜ合わせて、それなりの人の意見ができてきたと思うんだけど、今は家のなかでも親子の断絶、地域コミュニティに行けば、町内会長は75だから話になんないよと。会社でも若手に声をかけて「夜一杯呑もう」と言ったら、若手は着いてこない。となると、じゃあ何でみんな決めてるんだとなると、インターネットを見るのと、テレビを自分の部屋で見ているんですね。ただ、これはねえ。この国を弱くしている最前線だと思いますね。

渡部 一番大事な人間関係、これが薄くなってきている。まあ、IT時代という、これもあるんだろうなぁ。やっぱり、だから教育も学校教育だけじゃなくて、家庭教育、社会教育、学校教育。この三位一体、これこそ三位一体でこれからやらなくちゃなりません。じゃないと日本は滅びちゃう。

加藤 そう思いますね。で、そういう点から考えると、私はこれから“学校区”というのが重要だなと。小学校区、中学校区。学校区の中でどうしても子どもの教育が必要だから、人間が付き合うんですよね。それで、スポーツ少年団というのがあって、または芸能を教える伝統があったり、いろいろするんだけど。

渡部 民謡があったりね。

加藤 民謡があったり。こういう学校を中心としたコミュニティというのが活き活きとするようにできないかと。

渡部 すべてはやっぱり、加藤先生、故郷じゃない。

加藤 故郷。うん……

渡部 村に鎮守の森があってね。かならず学校があって。明治維新で一番偉かったのはね、どんな山奥の部落にも、どんな海の果ての孤島にも、学校を作って郵便局を作って、そこに鎮守の森、氏神様があって、そこにひとつの共同体、社会があったんですよ。それが日本を生み出してきて、この国をこれまでにしてきたんですよ。

加藤 そうですね。だから、人間のあり方をどう考えるとか、教育するかって言ったって、頭の中で考えたってダメなんで、やっぱり人間がワーッと集まっている中で、「喧嘩するときには刃物を持つなよ」とか、「集会には遅れてくるなよ」とか「金を儲けた奴は酒をいっぱい出しておけ」とか、そういうある種のルールみたいなものが、人間の付き合いの中から生まれてくるところに、本当の心のルールができて、心の教育ができてくるという気がしますね。

渡部 おっしゃるとおり。

加藤 その意味では、地方のことをもっともっと重視してもらわないといかんときに正に来たと。

渡部 そのとおり! このままで地方切捨てが進んだら、故郷がなくなり、この国が滅びるの。

加藤 そうですね。

渡部 この国に日本人がいなくなっちゃうんだ。要するに、日本の心を持った人が。

加藤 結局、日本て何だろう?ってよく言われるけれども、恵まれた自然に特別の尊敬の念を抱きながら、人間が集った中から作り上げてきた価値観、それが根っこかなっていうふうに思うんですが。まあ、そういうことで私らも頑張っていきますけれども。

渡部 山形県と福島県をもっと発展させましょうよ。

加藤 そうすると、日本が良くなる。

渡部 日本が良くなる!

加藤 本日はどうもありがとうございました。
 

※ ビデオとテキストでは、表現に異なる部分がありますが、
ご覧のテキストをもって当人の最終見解とさせて頂きます。

 
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