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1999年1月29日 ダヴォスより

「アジアの奇跡」再現のための条件

加藤 紘一 前自由民主党幹事長
1999年1月30日
於:ダヴォス

 御紹介ありがとうございました。

 アジア経済回復のために、日本が重要な役割を果たすべきであるというのは、もっともなことであります。まず最初に、日本はこうした課題に対処する用意があるということを明確にしたいと思います。

このための日本の役割につき話を進める前に、その背景にあるアジアの健全な経済ファンダメンタルズにつき触れておきたいと思います。アジア危機は既に底を打ったように見受けられます。シンガポールや香港のように、嵐を耐え忍ぶことに成功した経済は、近隣諸国の回復を後押ししており、タイ、マレーシア、韓国など危機の影響を受けた国々では、成長軌道への復帰が期待されております。回復の兆しは金融部門においても見られます。例えば、アジア各国から引き揚げてきた邦銀は、現在再度アジアに戻りつつあります。こうした回復は、高い貯蓄率、長年にわたる健全財政、大量の外貨準備等から明らかな、変わりない健全な経済ファンダメンタルズの上に築かれているものであります。

アジア各国等は健全な経済ファンダメンタルズを保持しているものの、アジアに再び「アジアの奇跡」をもたらすためには、やるべきことが多々あります。日本はそうした奇跡の実現のため、最大限の努力をしたいと思っております。

第一に、鍵となるのは技術移転であろうと私は考えております。日本は、先端電子立国として、技術革新を促進するため多くの措置をとってまいりました。そうした技術革新は、技術移転を通じて普及させ、アジア諸国と共有することができるのです。これらは、経済の再生を支えかつ加速させることから、経済回復の過程において決定的に重要なものとなるでしょう。そして、情報通信分野における技術革新は、アジア諸国間における相互のつながりがより高度なものとなるための基礎となるでしょう。また、当地域において同一の革新的技術を共有することは、他の分野においてより一層の協力関係を築くための下地となることも期待されます。

第二に、最終的には、アジア諸国等は、安定的な通貨制度の導入につき検討することが適当になるでしょう。アジアにおける経済ファンダメンタルズが健全であるにもかかわらずアジア危機が発生した原因の一つとして、アジア各国通貨が米ドルにペッグされていたことが挙げられます。外国為替市場の安定性は、将来の危機の予防となるだけでなく、当地域における健全な経済成長のための重要な必要条件の一つでもあります。こうした考えは、現時点では非現実的なものに聞こえるかも知れませんが、相互協力の精神の下、このような理想的な目的に向かって緊密に取り組んでいくことは有益ではないでしょうか。他方、短期的には、アジアにおける通貨支援のための地域的協力スキームにつき検討を進めていくのが適当なのではないかと私は考えております。今般の危機から学んだ重要な教訓は、危機においては何らかの地域的協力によりIMF融資を補完すべきであるということです。日本はこのため指導的な役割を果たしてまいりたいと考えております。

第三に、日本は他のアジア各国の努力を持続させ、補完するため、日本経済回復の確保に向けて可能な限りの努力をしてまいります。日本は既に、内需を拡大し、また日本経済の健全な成長を確保するため、あらゆる措置をとってまいりましたが、今後とも必要に応じて引き続きあらゆる措置をとってまいります。日本経済は、アジア経済成長のためのエンジンとなるべきなのです。また、日本は新宮澤構想のような支援策を引き続き実施してまいります。この構想は回復に必要な政府部門の資金の流れを充分に確保するため、300億ドルの資金を提供するものです。必要な場合には、当プログラムの実施を早め、更なる拡充を図ることも考えております

アジアの奇跡は既に終焉したのだと考える人もおりますし、多くの非アジア人がそう信じたがっております。しかし私は、アジアが、アジアの奇跡の過程で見せた潜在的な力を持ち続けていると信じており、もう一度そうした奇跡を実現することを信じております。

 御静聴ありがとうございました。

 

 

 

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