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小渕流「無の政治」への挑戦!
聞き手 大下英治
何でも「通し」の第145通常国会で"安定政権"を見せつけた小渕首相が、自信を持って臨む自民党総裁選。小渕断然有利の下馬評を前に敢然と立ち向かう加藤紘一候補。"禅譲"の甘い声を断ち切って、「政策音痴」「リーダーシップ欠如」「真空政治」と揶揄される現政権にどのような戦いを挑むのだろうか。
「政策マン」加藤をいかに訴えていくか
− 加藤派内に、今回の自民党総裁選に堂々と出馬して、日本のリーダーとして日本をどういう形にしていきたいのか、国民にはっきりと示すべしという意見と、今回は出馬しないで、小渕派の野中広務官房長官との太いパイプを活かし、小渕首相から総裁の座を禅譲してもらった方が賢明だという意見があった。加藤さんとすれば、それらの相反する意見にはさまれ、いつの時点で出馬を決意されたんでしようか。
加藤 正式に出馬を決断したのは、7月の中旬ですかね。
− 派内の正反対の意見は、ご自分としても、それぞれ納得できたんでしょうか。
加藤 それなりに考え方は納得できました。が、政治に対する考え方の違いがあると思いますね。とにかく総理になるのがすべてだと考えるのか。それとも総理総裁になるだけでは意味がない、なって何をするのか。それから、しようと思ったことを実現できるのか。
実現するためには主張の強さと行動の強さがなければいけない。そうでなければ、人はついてこない。やはり、自分自身を考えると、自分の意思というものを、自分で確かめつつ進んでいかなければいかんというのが根っこにあるんですかね。
それに、禅譲路線といっても、確実に禅譲が決まっているわけではありませんからね。ある日、新聞が私のことをなんとなく「ポスト小渕の一番手」「総理にも最も近い人間」と書いてくれるようになったんですが、そういうふうにマスコミに書かれながら消えていった人も、何人もいるじゃないですか。そういうマスコミの評判よりも、自分自身でしっかりとした考えが持てるのか、自分の考えを実現していくための意志力をちゃんともてるのか。そこのほうが重要だと思いました。そういうことを派内のみんなにいって説得していった。
− 私も加藤さんを見ていて、実力者ということは十分にわかる。しかし、これまでは幹事長としての調整役という手腕を見せることがほとんどでした。だから、テレビの討論会などに出演されても野党を中心にいろんな反論が出されるのをたちどころに整理して、理論的に「それはこうだよ」と説明なさったわけですよね。
見ている者に対して、頭の切れることと調整のうまいことはわかった。だけど、リーダーとして日本をどういう形に引っ張っていくのか、日本に対するどのようなビジョンを持っているのか、いまひとつ見えにくかった。そういう面で今回の出馬は国民に調整マンだけでなく、リーダー加藤紘一をアピールできる絶好のチャンスだと思います。
加藤 そう。調整者としての仕事を4年やりましたからね。本格的連立というのは、日本の戦後政治史のなかでは、自民、社会、さきがけ三党連立政権の、いわゆる自社さ政権がはじめてなんですね。その前に細川政権も、羽田政権もあったんだけど、脆弱なものでした。単に自民党の批判をしているだけで時が過ぎていた政権にすぎない。細川政権が8ヵ月、羽田政権が2ヵ月、われわれの自社さ政権が4年。やってみると、調整役というのは、かなり己を殺さなければできません。
− 調整型よりも、もともと政策を打ち出していく政策マンタイプでしたものね。
加藤 埋没しちゃったからかもしれませんね。どちらかといえば、わたしは理念型かもしれませんね。
− 逆にいうと、政策マンだけでなく、調整もできるんだというイメージはつくられましたけども、政策マンより調整型のイメージが強くなりすぎました。加藤さんの側近の川崎二郎さんが、加藤さんが政策だけでなく根回しまでやらざるをえなくなった理由について、宏池会の特性が影響していると言っていた。宏池会では、物事をうまく説明できる人材がいなかった。そこで、加藤さんが引き受けざるをえなかった。
宏池会には、近藤元次、渡辺省一という人材がいた。が、近藤さんは亡くなられ、渡辺さんは病に倒れた。近藤さんと渡辺さんがいれば、県議経験者、地方政界の名うてのひとたちが加藤さんを支える体制ができた。加藤さんも、政策と根回しの両方を引き受けることもなかった。
川崎さんに、加藤さんがこうこぼしていたと言ってます。
「正直いって、小沢一郎さんと喧嘩したり、泥かぶりの仕事はしたくなかった。ある程度超然とした政治家として、国民に志を述べて外交を語るような役割をやりたかった。こんな政治家になるつもりはなかった」
川崎さんは、「われわれは、外交を語り、金融を語る本来の加藤さんの姿にもどさなければいけない。これからは、これまで加藤さんが背負っていた部分をわれわれが背負わなければならないだろう」と言っていました。
加藤 そうですね.....。
総裁選での争点とメッセージのある政治
− 今度、総裁選でぜひ、これだけは主張したいということを3つに絞っておっしゃってください。
加藤 まず1番目は、この国は大丈夫ということを強く主張したい。いろんな国で、苦しいときはあるんですよ。イギリスの25年前は、イギリス病でした。10年前のアメリカは、いまの日本とおなじ金融、産業の悩みを抱えてました。が、それぞれ立ち直っているでしょう。だから、この日本をイギリスやアメリカのように回復できないわけがないと思うんですね。
− 2番目は。
加藤 いま構造改革を、ちょっとモラトリアム(猶予)して先送りしている。それから、早く脱却しないといけない。この国は、資本と技術力と、それから1億2,500万人の人材という、大変なシーズ(種)をもっている。それを花開かせるためには、土壌が重くなりすぎているんですね。科学肥料もぶちこみすぎている。白く、固くなっている。それを早く直さないといけない。砕いてやわらかくし、有機肥料を入れないといけない。それをやったのが、橋本さんのビッグバンなどの六大改革なんです。
が、その手術がちょっときつすぎた。悲鳴が上がって、いま小渕さんが癒しの政治をやっているわけです。しかし、この時期はあくまで癒しであって、本来国の底流が動きはじめている改革への流れは、いずれすぐまた手をつけなければならんのだという意識をリーダーが顔に出さないといけないと思うんですね。そこの脱却をしなければいけない。
− 3番目は。
加藤 政治はやはりメッセージをいわなければいけない。小渕さんは、いわゆる"無の政治"。あるいは、なんでも聞きますという"真空の政治"と自分を表現されている。リーダーが無ではいけません。小渕さんは決して、無ではないんですよ。考えがない人があそこまでいくわけないんで。それをあえて言わない伝統的な政治スタイルをとっているにすぎないんです。が、これからのリーダーは、自分の考えを明確に表現しなければいけない。国の経済が順調で、国民の目的意識もはっきりしている平静なときには無でもいいんです。
が、いまのように先が見えないときに、トップリーダーが、私には考えがありません、だから人と対立しません、というようなことを言ってはいけません。だから私は、今回の総裁選を、自分の考えをいうための、自分の夢をはっきり示すための場ととらえてます。それで国民が少しでも元気になって、ああ、そういうものの見方もあるんだ、日本はやれるのかもしれんと。そうなったら、私は総裁選をやった意味があったな、と。総裁選は、私自身の心のなかで大きな勝利になると思います。
国民のなかにある2つの不安の払拭を
− 主張をもっと具体的に言うと....。
加藤 国民のなかに2つの不安があります。これに、まともに立ち向かっていかないといけない。
− 1つは。
加藤 たとえば、自分の夫は、大企業に勤めている。が、今後は大丈夫だろうかというような雇用の不安。日本の経済の先行きについての不安だと思うんですね。10年前のアメリカを見ますと、さっき言ったように同じ問題を抱えていたのが、立ち直った。なぜ立ち直ったのか。2つの分野がリーダーなんです。1つは金融技術力、もう1つの分野は、インフォメーション分野。
− 金融技術力でいえば.....。
加藤 もちろん10年前は、日本の銀行が強かった。アメリカは、デリバティブ(金融派生商品)という強力な金融技術を身につけてアジアを席巻し、日本をゆさぶったわけですね。そういったことは、別に国士の広さとか、自然資源の広さとは関係ない。日本でもやれるはずなんです。いま、それをやろうとすると有力大学経済学部は、そんなものは学問ではないと言って、やむをえず工学部の人がやりはじめている。この大学の固さは、一体何だと。
− もうひとつのインフォメーション分野については....。
加藤 ビル・ゲイツのマイクロソフトに代表されるようなインフォメーションテクノロジーは、アメリカ・カリフォルニア州のシリコンバレーで生まれているんですね。よく見ると、それはスタンフォード大学とカリフォルニア大学のバークレー校の基礎研究を民間企業に出したんですね。それからバイオテクノロジー。ボストンにはハーバードとMIT(マサチューセッツ工科大学)のバイオテクノロジーの研究成果を受け止める企業群が生まれて、産学共同をやっているんですね。
日本で、それを今やれるかといったら、できない。日本の大学や研究所は、ほとんど有力なのが国立ですから。それをやろうとすると、もう汚職の世界なんですね。産学共同は"悪の世界"なんですね。ごく最近も、有力教授が次から次へと逮捕されている。だから、一言でいうと、こんな産学共同はいけないなんていう障害物を置いたなかで、日本経済は世界に伍してよくやってきたな、と思いませんか。だから、これを急いで直さないといけないのです。
− わりと早くできるんですか。
加藤 リーダーが決断すれば、できるんです。4,5年で大きく改革できるだろう。それから、いわゆる産学共同に風穴を開けるというのは、半年、1年でできることですからね。急いでやらないと、特にバイオテクノロジーの世界などでは遅れをとる。そこはやれるんですよ。日本人は、賢いんだから。その賢さをうまく活用する社会システムが生まれてきてないので、そこは土壌改良しようじゃないか、システム改良しようじゃないかと。そうすればできるのです。
少子高齢化社会のなかでいかに生きるか
− もう1つの不安は?
加藤 少子高齢化の不安なんです。そこでいくつかの誤解がありますね。65歳以上を高齢化というなら、その日から介護が必要のような気分になっているんですよ。そうじゃなくて、昔は65歳から71歳までが老後でした。71歳が平均寿命でしたから。いまは76歳ですから、本当に介護の必要な期間というのは、逆に短くなっているんです。
ゲートボールも盛んだし、73歳でパソコン教室に通うおばあちゃんもいたりしてね。ですから、そんなに暗い世界ではない。逆にいえば、65歳から72,73歳の方の時間を1週間、15時間から20時間提供してもらいたい。半分ボランティア、半分実費でね。子どもたちの教育とか、キャリアウーマンの子育てのために、自治体ないしボランティア団体にね。それでお互いに生きがいがあり、いい世界になるんじゃないかとおもうんですね。
それから、老後の不安のなかで、もうひとつ指摘したい。公的年金について、とんでもない誤解と不安、混乱があるんですね。国がやっている年金というのは、あてにならないし戻ってこないから、民間の年金がいいというような。
− 総理の諮問機関の「経済戦略会議」でも、そのようなことを言っていますね。
加藤 そうなんです。民間の生命保険がやる年金というのは、利益のためにやるんですよ。失敗すると生保会社は潰れるんですよ。国の年金は、支給額の3,4割、税金で注ぎ込む。だから、国のほうが圧倒的に有利なことは、誰が考えてもわかる。それなのに、なぜあんな誤解を総理の周辺がばらまいたのか。メディアも悪いとおもう。
つまり、サラリーマンが月給から30,000円年金保険料を引かれる。この積み重ねが将来2,000万円くらいになるんだけど、それが戻ってこないと思っているんだが、それは戻ってくるんですよ。30,000円払ったものが50,000円くらい。ただ、会社側も30,000円払うんです。合計合わせて60,000円がもどってこないといけないが、自分が払った30,000円に対して、50,000円ですよ。こんなに有利な老後の設計というのは、ないんですよ。
タンス預金だってかなわないし、民間の企業だって絶対にかなわないし、確定拠出年金型の401Kだって、まったくかなわない。だから、そこにもっと自信を与えないといけない。おそらく世の中のサラリーマンの9割は、給料からとられた分が、将来帰ってこないと思い込んでませんかね。
− リーダーも悪いですね。もっとわかりやすく説明して、国民を安心させなくてはいけない。
加藤 それから、3番目には少子化の問題。これは時間外保育、駅前保育ステーション等々、それから民間会社に少し保育需要に参入してもらう。
さらに1番大きいことは、子どもをつくるということが、男女の共同責任なんだという意識を、社会の経営者もふくめてもってもらうかが1番なんですね。夫はもちろんだけど。結局、女性が社会で働き、意義ある仕事をするようになった。そして経済が発達したから、女性一人でも生涯を送っていけるだけの給料をもらえるようになった。そうなったら、女性にとって結婚は最高、最良の就職なんだ、と30年前に田舎で言っていたことが夢のような時代になったんですね。
そのやりがいのある生活を、結婚、子育てで捨てたくないというのはわかるんですよ。そのためには育児休暇を、単に女性だけでなくて、男性にも認めるか、というところにいきつくとおも.いますよ。
− 某有力テレビ会社の社員が、妻といっしょに産休を取ったことでいま話題を呼んでいますよ。
加藤 厚生省の官房企画課の課長補佐が、それも鹿児島という男性社会出身のエリート宮僚が41歳で半年ほど妻のお産のために休暇をとっているんですね。テレビでそのインタビューを観たけども、やはり厚生省のその人は、自分は職場にもどってもキャリアに傷つかずに続けられるという安心感があったからと言っていた。普通の会社だったら、男が育児休暇とったら、建前は休暇をとらせてやるけど心のなかではいい加減にしろ、となるんじゃないですか。出世は止まりますよね。
− 特に田舎の中小企業なんかでそれをやったら、アウトですね。
加藤 だから、そこをみんなが本音で理解することができるか、ということなんです。男がオムツを取り替えるか、これはぼくらの世代ではノー。でも、若い世代では当たり前になってます。あと残った問題は、経営者が男の育児休暇を認めるかどうかですね。そして、左遷しないというのが最大の問題じゃないですか。
厚生省が、安室奈美恵の夫のSAMが愛児を抱いている写真をポスターにして、「育児をしない人をパパと呼ばない」とキャンペーンしている。役所のポスターにしてはよくできているな、と思った。少子化問題は、どうもそこにくるようですね。そんなことをみんなで議論して、男の育児休暇ということを、みんな首を傾けながら、しかしだんだん首が少し、理屈からいえばそうかもねというふうに少しでもなれば、自民党総裁選をやった意味もあるかな、と思ってます。いまの二つの不安に真正面に政治家がかたりかけようといったのは、そういう意味です。
自自公連立はまず閣外協力から始めるべき
− より目の前の問題に移ります。小渕首相、野中官房長官が主になって進めた自自公路線に対して、加藤さんは部分連合、いわゆるパーシャルでやるべきじゃないか、入閣問題に関しても、とりあえずは公明党は入閣しないで閣外協力にすべきだと主張されています。当初、総裁選では自自公の路線問題は争点にしないと言ってましたが、なぜここにきて....。
加藤 自自公の話になると、みんないっせいに、いまの政治には自自公問題以外にないというような雰囲気になります。毎日、新聞で書いているでしょう。
でも私たちは、総裁選では「2005年の日本は大丈夫か」とか「2010年に子どもたちがのびのびと勉強したり、サッカーしたりしていられるか」ということを論じたいんです。10年後にいまを振り返ると、世紀末に自自公なんて論議した時が半年ほどあったね、というくらいのことに終わるんじゃないかと思いますね。
総裁選では、地味だけど長いスパンの議論をしたいと思っていたんです。でも、とにかく連立の問題というのは、みんな考えるところが多い。考えを早く言ってくれとせかすので、それでは自分の考えを明確に申しますから、その後はビジョン論争にしてくださいというつもりで、今日(8月22日)から明言しはじめたのです。
私は、自公はとりあえずは閣外からはじめるのがお互いのためにいいと思います。自民党のためにも、公明党のためにも。それで最初、公明党もそうおもっていたとおもうし、自民党のかなりの部分も、最初は閣外からと認識していた。が、急速にあるところから、どなたが舵を切られたのかしらないけども、一挙に閣内までいく判断をされた。
− 小渕首相、野中官房長官あたりですね。
加藤 私は、衆議院で過半数を取れていれば、首班指名と予算や条約は対応できますから、参議院のほうで政策ごとのパーシャルを組めばいいと思います。しかし、小渕首相が参議院の数の足らないことを考えて、どうしてもおやりになりたいというならば、現実的な選択としてありうるとおもう。
が、そのときには全国の党員、それから全国の支持団体、とくに保守系宗教団体の理解と了解を、充分にとらないといけません。そのことを、われわれは強く言っていたんです。その後3週間ほどして、反対はますます強くなっていますね。とても了解が得られているという感じではない。一方、特にそういう宗教団体には属してないが、地域における良質な保守指導層というものが、静かな声で手短に、しかし、真剣に自公反対をいってくるようになりましたね。低い声で、「代議士、あれはいけませんよ」と。
いま自民党内でも、これまでわりといろいろ公明党に対してはっきりと意見を言ってきた人ですら、公明党に対してはあまりロにしなくなっている。非常に寂しいことです。自分の選挙の協力のことなどを考えると、損だと判断しているんでしょうね。だから、私はそういうことも考えてはっきり主張していくつもりです。
数が多すぎる与党は不安定政権を生む
− 衆議院500人中自自公を足した350人をまとめた巨大与党体制がいいか、ということをおっしゃってますね。
加藤 これで安定するというけども、数が多すぎるのは、むしろ不安定。それぞれ権力、もっと具体的にいえば、大臣の数、政務次官の数、それから使える財政資金も一定です。それをめぐって、従来は260人くらいで判断していたのが、350人で議論しちゃうわけでしょう。必ずもめます。自由党、公明党それぞれの政党が存在感を示そうと思って、自民党になかなか受け入れられそうにもないような発言とか要求をはじめるんです。
− まぁ、そうしないと埋没してしまいますからね。
加藤 だから、350の数が多すぎて、逆に不安定というのが、実は私の予想するところ。いや、それはすでに起きてます。自由党、公明党の間で、すでに問題が始まっているんです。これをクールに、厳しい政治判断力で、男らしい、ダイナミックな政局の分析をして対応ができなければ、危ないと思いますよ。それから350人の与党ができると、国会は空洞化します。
− 自自公以前の自自そのものに対しても、批判的で消極的に容認してましたね。
加藤 拙速にすぎたと私は思います。当時、3つの問題があった。選挙協力を現職優先としましたね。これには、強い危惧感を持っていました。2番目に、集団的自衛権の問題、3番目に消費税の3%への引き下げ。あとの2つに対しては、われわれは必死にブレーキをかけました。自由党があきらめてくれたときに、われわれは、自自連立を消極的容認と言いました。ただ、当時問題にした選挙協力問題は、案の定8ヵ月を経てまた表に出てきましたね。取り決めの脆弱性が予想どおり出てきて、9月、10月も問題として混乱要因になりつづけると思います。
− 公明党を閣内に入れるかどうかの路線問題は、総裁選で、票を入れる側にとってみると大きな問題ですね。俺も公明党の閣内連立はいやだよ、という人も多いでしょう。そういう思いの議員や党員も総裁選での打ち上げ方によっては、加藤さんについてきますね。
加藤 さあ、それは。300万人の党員がいますけども、うち200万人は系列党員ですから、それが系列の影響を受けるか、それとも一人ひとり判断するかはわかりません。これは開いてみないとわかりません。
− 小渕派は、系列党員の締めつけが得意ですからね。小渕さんもこれまではわりと呑み込んでいたけども、今後を考えると、そう簡単にいかなくなりますね。
加藤 でも、党内の支持者も非常に多いですしね。まあ磐石な構えをした巨大な空母に小さなフリゲート艦が立ち向かっていくようなものですから。そんな大きな動揺はないんだと思うんですけどね。
− ご自分とすれば、どのくらいの票数と考えてますか。
加藤 われわれは、目標数字はもたないようにしようと。本当に宏池会だけはしっかりまとまって、いい戦いをしていきたい、いい論争をしていきたい。それで、さわやかに、いい戦いしたな、いろいろ知恵も使って、印象に残ったな、それからいくつかの主張が、国民の脳裏に残ったな、となれば、私は成功だとおもいます。
− 党員のほうは、永田町の派閥の配分以上に取ればいいという考え方も。
加藤 あるんだろうけどね。まぁ、票とは別にいい印象に残る戦いをしたいです。
官僚政治に戻る!? 小渕政権の継続
− 総裁選後の人事は、どうですか。加藤さんとすれば、さわやかな戦いをしたつもりでも、相手にすれば、総裁選後も加藤派を締めつけてくる。
加藤 ないと思いますよ。私たちはさわやかな戦いが終わったら、またいっしょに協力をして、党のためにやっていこうと思います。それを小渕さんがどう取り扱うか、小渕さんの考えですからね。
− 野中さんとのパイプがあるから、次に禅譲してもらえるはずだったが、今回の総裁選で加藤さんと野中さん、および小渕派との間に亀裂が入るという不安は.....。
加藤 野中さんとの個人的な信頼関係は、きっちりあり続けるとおもってます。ただ、総裁選をやるかやらないか、禅譲というものがありうるか。より永田町の数の論理でものを考えるか、国民に問いかけるかという点については、野中さんと私との間には感覚の差があります。それはやむをえないんではないでしょうか。
それから、連立の在り方についても、私は4年間の三役で、自社さ連立運営に責任を持ってやりました。そこでの結論は、数だけ集めると運営は逆に難しくなるということでした。
私が幹事長時代におこなった2つの大きなミスがあった。その1つが、2期目の幹事長を辞めるときに、総選挙でなんとか239議席まで伸ばしたが、過半数に足らなかった。それをいろんな方と話し合って、251にしたわけですよ。ところが、そのとたんに自民党内で傲慢な声が出ました。
「もう、土井さんは要らない」と。土井さんの方も「もう私たち、要らないんでしょう」と。憲法や財政、金融分離について、連立のハードルを高くしましたね。だから、連立の在り方について、私と野中さんの考えは違いますね。
去年7月に小渕政権ができて、私は、まるで私がつくった内閣と思うくらいの気持ちで、裏で一所懸命協力をおしまず、野中さん、古賀(誠・国対委員長)さんに協力してきた。ただ、自由党との連立話が持ち上がったあたりから、政治の手法が私とは違ってきた。
数を集めることが安定です、と今日も野中さんがいっているけども、政治の安定は何か。政府の官僚がつくった法案を通す。それも、できるだけ早く。これが安定というならば、また官僚政治に戻るということです。数を頼んだ政治というのは、官僚政治ですよ。
− 総裁選での論戦を通じて、大いに21世紀の日本について国民にも考えさせるきっかけをつくってください。
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