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 速水日銀総裁の「植物論」

加藤紘一です。
過去2〜3週間の政治の中心は、田中眞紀子外務大臣と外務省の対立でした。あまり混乱すると、国益を損なうことになるので大変心配していました。6月16〜19日の外相訪米も、大過なくほっとしていた矢先、一昨日の外務委員会の田中・鈴木論争で、また火がつきました。今日の外務委員会もまだもめているようです。早く収拾してもらいたいと思っています。なぜならば、今一番心配しなければならないのは、国内経済の状況だと思うからです。政府の経済見通しも悪化の方向となっていますし、ここ数日の株価の状態も一進一退です。景気対策の特効薬はなかなか見つかりませんが、国会開会中はもっともっと中長期的な経済対策に議論が集中すべきだと思います。
最近とられた経済対策の中で、一番注目されるのは、3月19日の日銀の量的緩和策です。しかし、発表されたとき、私は果たしてどの程度効果があるかなと思いました。金融関係者から話を聞けば聞くほど現在の状態はなかなか簡単ではありません。お金を貸したい企業はお金を借りない、借りたい企業は問題がありすぎて貸せない。そういう中で日銀が金融機関に資金を供給しても、資金はなかなか流れていかないのではないかと思っていました。どうも最近の状況をみると、それが実態のように思えます。
6月19日、日銀の速水総裁は「植物にいくら水をかけても大きくなっていかないような状況だ」という表現で、量的緩和をさらにやっても、必ずしも効果がないということを告白していましたが、そういう中にあってまだいろんな与党や政府の中から金融のさらなる量的緩和論が出ているのが私にはちょっとピンときません。最近、日銀が国債の買いオペをやって民間に資金を供給しようとしていますが、民間金融機関は資金を必要としていません。従って、そのお金が日銀に戻ってくる状態が続いています。つまり、日銀が銀行を通じて市中にお金を流すという金融緩和の機能が働いていないのです。そんな状況の中で、私は経済・金融情勢の先行きを心配しております。
水を与えたら育ってゆく種や球根を早く経済構造改革で誕生させたり育てたり、見つけていくことが今求められています。当然少し、遠回りに聞こえますが、基礎科学研究や産業技術開発に資金を回していくこと、情報通信政策の一層の自由化などで新たなビジネスが生まれるようにすること、が重要です。そのためにも、経済財政諮問会議の提案はまだまだ総論の域を出ていませんが、方向としては正しいもので、できるだけ早く具体論について国民的な議論が行われるべきです。その議論を経ずに単に日銀に対する量的緩和の議論に終わってしまっては、問題を避けていることになると思います。いい結果を生みません。
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