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「矛の防衛」「楯の防衛」

加藤紘一です。
15年前、私が中曽根内閣で防衛庁長官をしていた時に、アメリカのレーガン大統領がSDI構想をはなばなしく打ち上げました。いわゆる「戦略防衛構想」と呼ばれたものです。その中心は、ソ連などから飛んでくる核弾頭つきの攻撃ミサイルをレーザー光線や迎撃ミサイルで撃ち落とすというものです。「まるで、フマキラーで蚊を落とす。リモコンでテレビのスイッチを切るようなもんだな。そんなことが出来るのかな」――最初に構想を聞いたときの私の印象でした。また、日本国内でも、アメリカ内部でも「カウボーイ大統領のスター・ウォーズ」と揶揄されました。
けれども、大統領は、めげずに国民に演説しました。手元に記録がないので、記憶が不正確かもしれませんが、要点は次のようなものだったと思います。
「これまで、米ソ両国は核弾頭をつけた大陸間弾道ミサイルに血道をあげてきた。貴方の国がミサイル攻撃でわが国民を400万人殺せると言えば、我々アメリカは、ソ連の国民500万人を殺せる、という。そんなことになったら大変だという「恐怖の均衡」「相互確証破壊」で平和が保たれているのが本当に人間的なことだろうか――いや決してそうではない」
それに続けて大統領は、「だから攻撃ミサイル中心の防衛はだんだん減らそう。その代わり飛んできたミサイルを着弾するまえに撃ち落とす防衛システムを開発しよう」と呼びかけていました。
全世界の軍事力の頂点に立つ米大統領の防衛演説に「人間的でない」という言葉が出てきたので、「ほおー」と思わずつぶやきました。
このSDI構想は、その後実現したわけではありませんが、当時のソ連はこの構想に対抗できないとあきらめ、ソ連型社会主義の崩壊へのキッカケとなります。
ブッシュ大統領が今回打ち上げたミサイル防衛構想も基本的には、レーガン構想と同じ方向のものだと思います。世界戦略のなかで、アメリカの優位
を保持するという目的であることは明確ですが、攻撃型兵器(矛=ほこ)を縮小し、防衛型システム(楯=たて)を開発させようとする発想は、わが国のもっぱら守りに徹する(専守防衛)の考え方、ハリネズミ防衛論の方向に合ったものなので、充分検討すべき提案だと思います。中国も頭から反対せず、米国の発言に耳を貸し、討議に加わるべきではないかと思います。
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