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政府・自民党内で、財政運営を巡る「路線対立」が表面化している。小渕恵三首相は「二兎(と)を追う者は一兎をも得ず」として、当面は積極財政を継続して景気回復を優先する姿勢を鮮明にしているが、国と地方を合わせた政府債務残高は国内総生産(GDP)の1.2倍と先進国中最悪の水準に膨らんでいる。景気回復に向けて現在の財政出動を続けるべきか、それとも何らかの路線転換が必要なのか ― 。自民党内で積極財政路線を主導する亀井静香政調会長と、「ポスト小渕」もにらみながら「経済構造改革」重視の立場を取る加藤紘一前幹事長に聞いた。
(※当ページでの掲載は加藤前幹事長のコメントのみ)

 

私は景気対策派

― 小渕首相は景気回復と財政再建を同時に追求するのは無理だと主張しています。

あの発言は経済構造改革と財政構造改革を混同している端的な例だ。経済構造改革と景気回復の二兎は追える。私が言っていることを財政構造改革としかとらえていないのは、日本経済を再興する問題点を把握していないからだ。病状診断を誤り、誤った手法で病気を治そうとしていると断言せざるを得ない。5百兆円の日本経済で財政部分は十数%。財政だけでなく、経済全体を元気にしようということであり、その意味で私は一番真剣な景気対策派だ。

― 経済構造改革の必要性は首相や亀井氏も認めています。実質的にはあまり変わらないのでしょうか。

問題はどういう道筋で景気を回復させるか。公共事業が少しでもストップすると景気が息切れするような経済に問題がある。財政出動すれば景気にいいと思うと、新たな分野を開拓する努力を怠ってしまう。公共事業は財政投融資も含めて40兆円ぐらいの世界だが、そこを3%伸ばすより、3百兆円の個人消費の部分が2%伸びれば6兆円の景気刺激になる。国民がモノを買わないのは将来への不安と魅力ある新たな製品が出てこないからだ。

言葉なき指導者

― 経済構造改革が直ちに深刻な需給ギャップの解消につながるでしょうか。

需給ギャップ論は後ろ向きで、政府の力でそれを埋めるというのは問題の本質を理解していない。

― 小渕政権も積極型予算は2000年度が最後と言っています。

2000年度予算案は本当に積極型なのか。一般会計で3.8%伸びたが、主なものは預金保険機構への交付国債2兆円の現金化。これが約2.5%を占める。公共事業は国費では伸びていない。積極型だとか、夏に補正を組むとか従来の議論をしているのは、組んだ予算をよく理解していないからだ。

 

 

 

 


 

― 自分で組んだ予算を理解していない、と。

例えば、科学技術振興費は約1兆180億円で前年度比で6.8%の伸びだが、首相が『とりあえずは景気対策』と言うと、従来型の公共事業を重視した予算のような印象になる。亀井さんが『バラマキがなぜ悪い』と言えば、国民は後ろ向きの予算かとがっかりする。どうして指導者が将来に向けた予算を組んでいると発言しないのか。言葉のない政治がまた不景気につながっていく。

― 財政悪化を食い止めるには、大幅な歳出削減か増税が不可欠になりませんか。

国債の発行を減らし、国債残高の累増を抑えるのは至難の業。だから経済構造改革の必要性を訴えている。首相が実施した恒久減税、特に課税最低限を引き上げた所得税減税が財政悪化をもたらした。消費税率の引き上げを考えていかなければいけない時期もいずれ来るだろう。

亀井発言で不信

― 加藤幹事長時代の97年に実施した消費税率の引き上げなど「9兆円の負担増で景気が冷え込んだ」との批判もあります。

財政で9兆円を引き上げたが、老人医療費の引き上げなどの2兆円は老人層に一時の消費の冷え込みを与えた気はする。しかし、ここ2年の不景気は金融ビッグバンに伴うものだ。改革の痛みを事前に十分説明してなかったことは反省しなければならないが、改革の方向は85年のプラザ合意以降、日本がやらなければいけない道だった。

― 介護保険制度の見直しとペイオフの解禁延期をどう見ますか。

選挙目当てのむなしいポピュリズムと国民に受け取られ、政治不信を増した。『家族で老人を介護するのが日本の美風だ』と亀井さんは言うが、あの発言で自民党の保守票の百万から2百万票を失ったのではないか。

(2000年1月30日 日本経済新聞より)

 


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